2014/9 No.405

 

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師の作品を学ぶ
       
 空は太初の青さ妻より林檎うく
  草田男(句集「来し方行方」昭和二十一年)
 人はみな一会の夢の秋ともし
  幻 魚(黒姫百九十六号昭和五十四年)
 雲は秋胸張る所作も一自愛
  紫 晃(句集「遠汽笛」昭和五十年)

草田男師処女句集「長子」の跋に「作品が直ちに作品の分身であり、作者の生活の集積である・・・」とある。今回の三作品は共に、三師の姿を雄弁に物語る。

草田男師の句を香西照雄氏が解釈すると「太初以来、不変の青さの秋天を仰ぎ、食後の林檎を妻の手から受け取る瞬間、自分達が花咲き匂う楽園にいるアダムとイブの世界に帰還したような気持になった。」になる。この句が作られた終戦直後の食糧難、困窮時代に思いを馳せると、草田男師がいかに明るくその時代を生き抜こうと決意してるかを、伺い知ることができる。「萬緑」を創刊した壮気あふれる出発点でもあった。

幻魚師の句は逝去する三ケ月前の作。百九十四号後記に師は「俳句の詩性を忘れていいとは思っていないが、当座の座興の面白味も忘れてはならない。」と記す。己の死を予知するが如く即興の軽みを回顧してる句には、幻魚詩魂をひとしお感じる。

紫晃師の句は、「齢知命を記念して白馬岳登山に挑む」と前書きされた連作中の一つ。山頂に立つ自愛あふれる孤高の一句に、謹厳実直なる師の背が鮮明に映る。

(北童記)
 

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伊賀上野逍遥
       
 はせを生家ゆたかに揺るる青芭蕉神田北童 
 芭蕉像見下ろす土間の梅雨じめり 〃 
 蟻一匹芭蕉生家の狭き土間 〃 
 青梅雨の庇まぶかく俳聖殿 〃 
 青梅雨の囲みを解かず俳聖殿 〃 
 青葉闇蓑虫庵に塚あまた 〃 
 木下闇まとふ庵に句を偲ぶ 〃 
 蓑虫庵はせをの真筆暑に籠る 〃 
 詩魂埋む蓑虫庵の木下闇 〃 
 かくも燃ゆ人亡き家の凌霄花 〃 
 師を悼む天へ直なる立葵 〃 
 黄泉路でも紫晃晴とや遠青嶺 〃 

 

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黒姫抄
       
 極まりて天を指したる花葵中宮寺立夫 
 呼び捨ての叱咤なりしよ梅雨の星井上ひさ子 
 別の世の言の葉ひそむ落し文吉田春子 
 師の叱咤降りくるごとし堂涼し 森泉 透 
 合歓咲くやいつもと違ふ道なりき村田 守 
 山祇の下されものの山清水長瀬吉毅 
 泥鰌鍋丸か割きかと仲居問ふ神田三布縷 
 声高の駒鳥誘ふ森深し岩原和子 
 友癒えて垣根に咲かす薔薇真つ赤半坂峰子 
 不揃ひの自家採り苺甘み濃く吉村郁子 
 ぐづり泣く子に藤の花揺れ止まず堀川悦子 
 遮断機の音の高鳴り蟻走る吉田裕子 
 白桃剥く鬼籍に入りし友偲び板山美代子 
 宵宮の女装束稚児妖し徳久芳拙 
 斑猫やいつか来た道汝が知る本多紀男 
 沖よりの雨に色待つ四葩かな工藤チトミ 

 

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博塵集 白塵集
       
 極まりて天を指したる花葵中宮寺立夫 
 矢の如く遠流の島へ星奔る菅原あや子 
 呼び捨ての叱咤なりしよ梅雨の星井上ひさ子 
 別の世の言の葉ひそむ落し文吉田春子 
 師の叱咤降りくるごとし堂涼し森泉 透 
 牡丹の崩れ妖しき音幽か稲沢礼子 
 合歓咲くやいつもと違ふ道なりき村田 守 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 立葵登りつめたる先の空小林陽子 
 青蔦の壁の窓開く喫茶店大屋惟男 
 立葵耳そば立てる人の性青木増江 
 山祇の下されものの山清水長瀬吉毅 
 泥鰌鍋丸か割きかと仲居問ふ神田三布縷 
 声高の駒鳥誘ふ森深し岩原和子 
 友癒えて垣根に咲かす薔薇真つ赤半坂峰子 
 不揃ひの自家採り苺甘み濃く吉村郁子 
 ぐづり泣く子に藤の花揺れ止まず堀川悦子 
 木洩れ日の椅子に置きたる夏帽子奥原昭子 
 遮断機の音の高鳴り蟻走る吉田裕子 
 白桃剥く鬼籍に入りし友偲び板山美代子 
 宵宮の女装束稚児妖し徳久芳拙 
 斑猫やいつか来た道汝が知る本多紀男 
 沖よりの雨に色待つ四葩かな工藤チトミ