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| 遥かにも彼方にありて月の海 | |||
| 草田男(昭和七年作・句集「長子」) | |||
| 仏ゆえ田ゆえ月ゆえ今日今宵 | |||
| 幻 魚(昭和五十一年作・「黒姫誌」百七十八号) | |||
| 星一つ伴なひ弦月城肩に | |||
| 紫 晃(昭和三十七年作・句集「遠汽笛」) | |||
草田男句は師が三十二才、青春時代の作品である。句意・表現・句調共にロマンチシズムの溢れる句。この句を香西照雄氏は「“も”の強調・“ありて”の存在感の強調で、若々しい詠嘆の調べとなった」と解説してる。仮にこの句を「遥か彼方の月の海」として比べると句の情緒は大きく異なる。高所から眺めた月の海のいぶし銀の様な状景に、若き草田男師は己の未来も見てると私は解釈してみた。
幻魚句は師が六十七才の時、長野市若槻・古刹地蔵院での仲秋名月句座での作品。幻女会メンバーが師と同席してる。この句の「ゆえ」の解釈を「縁・ゆかり」とすると、今、皆で共有してる寺院と田園の風景、仲秋の月の眺め全てが、今日今宵の句座につがる「えにし」であると理解できる。師と幻女会員との固い絆を詠った一句。
紫晃句は師が三十八才、壮年期の作品である。多分、松本城の夜景遠望であろう。ゆみはりづき(弦月)と星一つを掲げた城の天守に、師は何を意識したかは知る由も無いが、謹厳実直の師が双肩に背負われていた諸々の重さを感じた。
月の句は、詠む時点の年齢によりそのモチーフが大きく変わることを、三人の師の作品で再認識した。
(北童記)
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| 木下闇鋭気迫るる檜谷 | 神田北童 | ||
| 青葉風いよよ伊那路へ峠越ゆ | 〃 | ||
| 木曾の水運ばれ植田ひろびろと | 〃 | ||
| 植田原水乞ふ軌跡ひそめたる | 〃 | ||
| 集落を結ぶ絆の植田水 | 〃 | ||
| 開鑿(かいさく)碑真向く植田の水まんまん | 〃 | ||
| ねんごろに見回る歩幅植田風 | 〃 | ||
| 入梅の雲の飄逸流れ行く | 〃 | ||
| 梅雨の灯や山頭火論はづみたり | 〃 | ||
| 句の道に肝胆照らす梅雨の宿 | 〃 | ||
| 雲表を染め朝焼の序章なす | 〃 | ||
| 朝焼の消えて一期の静けさよ | 〃 |
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| 櫛挽くは祈りに似たり梅雨工房 | 吉田長久 | ||
| 片白草光集めし池丸く | 川原澄子 | ||
| 深閑と光ひとすぢ苔の花 | 浅野竹廣 | ||
| 川下の闇あかあかと鵜飼船 | 古坂 房 | ||
| 踏まる度小さき溜息柿の花 | 長田五月 | ||
| 紫蘇揉みて生命線の若返る | 野口 久 | ||
| 眠る葉の上にふはりと合歓の花 | 佐野 明 | ||
| 三又路の一つへ縺る梅雨の蝶 | 上坂とし子 | ||
| 蔵の町辻に名残りの桑残る | 田中 和 | ||
| 捩花のねじれて芯の強さかな | 吉村郁子 | ||
| 冷奴手ぬきと言ふも美味なりき | 岩原和子 | ||
| 石段のじやんけんゲーム夏帽子 | 宮尾静子 | ||
| 掴み出すやうに伸びたる夏木立 | 山瀬やす子 | ||
| 一言に背なを押さるる立葵 | 西 絹代 | ||
| みちのくの雨足早し青田波 | 板山美代子 | ||
| 碑となりし戦地の便り木下闇 | 工藤チトミ | ||
| めまとひに鎌研ぐ手元くるはさる | 松下米子 | ||
| 古時計べつとり響く夏の昼 | 宮下陽子 |
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| 櫛挽くは祈りに似たり梅雨工房 | 吉田長久 | ||
| 片白草光集めし池丸く | 川原澄子 | ||
| 深閑と光ひとすぢ苔の花 | 浅野竹廣 | ||
| 川下の闇あかあかと鵜飼船 | 古坂 房 | ||
| 踏まる度小さき溜息柿の花 | 長田五月 | ||
| 紫蘇揉みて生命線の若返る | 野口 久 |
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| 眠る葉の上にふはりと合歓の花 | 佐野 明 | ||
| 三又路の一つへ縺る梅雨の蝶 | 上坂とし子 | ||
| 蔵の町辻に名残りの桑残る | 田中 和 | ||
| 捩花のねじれて芯の強さかな | 吉村郁子 | ||
| 冷奴手ぬきと言ふも美味なりき | 岩原和子 | ||
| 石段のじやんけんゲーム夏帽子 | 宮尾静子 | ||
| 掴み出すやうに伸びたる夏木立 | 山瀬やす子 | ||
| 一言に背なを押さるる立葵 | 西 絹代 | ||
| みちのくの雨足早し青田波 | 板山美代子 | ||
| 碑となりし戦地の便り木下闇 | 工藤チトミ | ||
| めまとひに鎌研ぐ手元くるはさる | 松下米子 | ||
| 古時計べつとり響く夏の昼 | 宮下陽子 |
