2016/09 No.417

 

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師の作品を学ぶ
       
 遥かにも彼方にありて月の海
  草田男(昭和七年作・句集「長子」)
 仏ゆえ田ゆえ月ゆえ今日今宵
  幻 魚(昭和五十一年作・「黒姫誌」百七十八号)
 星一つ伴なひ弦月城肩に
  紫 晃(昭和三十七年作・句集「遠汽笛」)

草田男句は師が三十二才、青春時代の作品である。句意・表現・句調共にロマンチシズムの溢れる句。この句を香西照雄氏は「“も”の強調・“ありて”の存在感の強調で、若々しい詠嘆の調べとなった」と解説してる。仮にこの句を「遥か彼方の月の海」として比べると句の情緒は大きく異なる。高所から眺めた月の海のいぶし銀の様な状景に、若き草田男師は己の未来も見てると私は解釈してみた。

幻魚句は師が六十七才の時、長野市若槻・古刹地蔵院での仲秋名月句座での作品。幻女会メンバーが師と同席してる。この句の「ゆえ」の解釈を「縁・ゆかり」とすると、今、皆で共有してる寺院と田園の風景、仲秋の月の眺め全てが、今日今宵の句座につがる「えにし」であると理解できる。師と幻女会員との固い絆を詠った一句。

紫晃句は師が三十八才、壮年期の作品である。多分、松本城の夜景遠望であろう。ゆみはりづき(弦月)と星一つを掲げた城の天守に、師は何を意識したかは知る由も無いが、謹厳実直の師が双肩に背負われていた諸々の重さを感じた。

月の句は、詠む時点の年齢によりそのモチーフが大きく変わることを、三人の師の作品で再認識した。

(北童記)
 

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伊那路へ
       
 木下闇鋭気迫るる檜谷神田北童 
 青葉風いよよ伊那路へ峠越ゆ 〃 
 木曾の水運ばれ植田ひろびろと 〃 
 植田原水乞ふ軌跡ひそめたる 〃 
 集落を結ぶ絆の植田水 〃 
 開鑿(かいさく)碑真向く植田の水まんまん 〃 
 ねんごろに見回る歩幅植田風 〃 
 入梅の雲の飄逸流れ行く 〃 
 梅雨の灯や山頭火論はづみたり 〃 
 句の道に肝胆照らす梅雨の宿 〃 
 雲表を染め朝焼の序章なす 〃 
 朝焼の消えて一期の静けさよ 〃 

 

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黒姫抄
       
櫛挽くは祈りに似たり梅雨工房吉田長久
片白草光集めし池丸く川原澄子
深閑と光ひとすぢ苔の花浅野竹廣
川下の闇あかあかと鵜飼船古坂 房
踏まる度小さき溜息柿の花長田五月
紫蘇揉みて生命線の若返る野口 久
眠る葉の上にふはりと合歓の花佐野 明
三又路の一つへ縺る梅雨の蝶上坂とし子
蔵の町辻に名残りの桑残る田中 和
捩花のねじれて芯の強さかな吉村郁子
冷奴手ぬきと言ふも美味なりき岩原和子
石段のじやんけんゲーム夏帽子宮尾静子
掴み出すやうに伸びたる夏木立山瀬やす子
一言に背なを押さるる立葵西 絹代
みちのくの雨足早し青田波板山美代子
碑となりし戦地の便り木下闇工藤チトミ
めまとひに鎌研ぐ手元くるはさる松下米子
古時計べつとり響く夏の昼宮下陽子

 

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博塵集 白塵集
       
櫛挽くは祈りに似たり梅雨工房吉田長久
片白草光集めし池丸く川原澄子
深閑と光ひとすぢ苔の花浅野竹廣
川下の闇あかあかと鵜飼船古坂 房
踏まる度小さき溜息柿の花長田五月
紫蘇揉みて生命線の若返る野口 久

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
眠る葉の上にふはりと合歓の花佐野 明
三又路の一つへ縺る梅雨の蝶上坂とし子
蔵の町辻に名残りの桑残る田中 和
捩花のねじれて芯の強さかな吉村郁子
冷奴手ぬきと言ふも美味なりき岩原和子
石段のじやんけんゲーム夏帽子宮尾静子
掴み出すやうに伸びたる夏木立山瀬やす子
一言に背なを押さるる立葵西 絹代
みちのくの雨足早し青田波板山美代子
碑となりし戦地の便り木下闇工藤チトミ
めまとひに鎌研ぐ手元くるはさる松下米子
古時計べつとり響く夏の昼宮下陽子