2017/09 No.423

 

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師の作品を学ぶ
       
 厚(あつ)餡(あん)割ればシクと音して雲の峰
  草田男(句集「銀河以前」昭和二十五年作)
 三十年生死の証(あかし)雲灼ける
  幻 魚(句集「幻魚」昭和五十年作)
 雲の峰ミットずぼりと球納む
  紫 晃(句集「遠汽笛」昭和三十八年作)

今号では「雲」を取り合わせした句を取り上げ、雲に馳せる三師の思いを探ってみた。 草田男句の「厚餡」は造語で、薄皮饅頭の餡が透けている状態を模写したのだと言われ、具体的に「シク」と擬音語がまじり師の感性の深さを感じる句である。厚餡と雲の峰の照応は「詩的直感の極致」と宮脇白夜氏は評している。この二物配合は形状からは同質的に見えるが、常識的な取り合わせでは無く、私には発想も及ばない。

幻魚句は太平洋戦争の悲史を色濃く背負う句である。師は多くを語らなかったが、昭和十六年に兵役召集され、ソ・満国境、タイ、マレー、シンガポール等東南アジアを転戦し昭和二十一年に復員された。多くの戦友を失い、戦場の過酷な体験を経て戦後を生きてこられた。文筆では雄弁であった幻魚師も、戦争体験に関しては寡黙だったと思う。その寡黙なる心底が、この句の灼ける雲へ鮮烈に投影している。

紫晃句は炎天下、甲子園を目指す球児の投球練習風景と想定した。遠い雲の峰とキャッチャーミット捕球との取り合わせには若き熱情を感じた。青春賛歌として雲の峰が象徴的である。

(北童記)
 

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砂防ダム
       
 蟻の道水子地蔵の足元へ神田北童 
 廃屋に栗の花影ざわめけり 〃 
 前垂れに埋もるる地蔵木下闇 〃 
 木下闇この大きさに身を委ね 〃 
 青蘆や鉱毒川の名は消えず 〃 
 深々と藍耽りたる七変化 〃 
 鳶の輪やどこまで続く雲の峰 〃 
 友偲ぶ青柿あまた落つる道 〃 
 志立てむ青嶺の重畳と 〃 
 累々とダム埋むる岩灼くるのみ 〃 
 松蝉の谺遠巻く砂防ダム 〃 
 灼く石のなすまま砂防ダムの黙 〃 

 

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黒姫抄
       
 晩歳のはらから揃ふ村祭吉田長久 
 凌霄花揺らぐ我身も揺るがるれ川原澄子 
 生き様を託し夏越の大祓浅野竹廣 
 涸ダムへ今生限りの蝉鳴けり古坂 房 
 玉菜剥く大地の雫手にこぼる長田五月 
 咲き継ぎてすでに天辺立葵故・野口久 
 ま青なる空へ背きて天女花黒森敦子 
 凌霄の一花拾ひて母追ふ児小林陽子 
 小波から大波と成り青田波脇田 警 
 木下闇笠を目深に親鸞像田中 和 
 荒ぶ川生みて青嶺の鎮もりぬ堀田芙美子 
 散る風を待つ一塊の蜘蛛の子よ宝田静子 
 ゆるり舞ひ人を怖れぬ山の蝶堀川悦子 
 花南天白寿の母の今有りし中田稔子 
 一口の総身に浸むる山清水邑上春代 
 音色よきラッパの如し百合の花窪田一青 
 薔薇剪つて深く刺さす指の先島田賢一郎 
 梅雨の傘くるくる回す下校の児北村秀男 

 

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博塵集 白塵集
       
 晩歳のはらから揃ふ村祭吉田長久 
 凌霄花揺らぐ我身も揺るがるれ川原澄子 
 生き様を託し夏越の大祓浅野竹廣 
 涸ダムへ今生限りの蝉鳴けり古坂 房 
 玉菜剥く大地の雫手にこぼる長田五月 
 咲き継ぎてすでに天辺立葵故・野口久 
 ま青なる空へ背きて天女花黒森敦子 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 凌霄の一花拾ひて母追ふ児小林陽子 
 小波から大波と成り青田波脇田 警 
 木下闇笠を目深に親鸞像田中 和 
 荒ぶ川生みて青嶺の鎮もりぬ堀田芙美子 
 散る風を待つ一塊の蜘蛛の子よ宝田静子 
 ゆるり舞ひ人を怖れぬ山の蝶堀川悦子 
 花南天白寿の母の今有りし中田稔子 
 一口の総身に浸むる山清水邑上春代 
 音色よきラッパの如し百合の花窪田一青 
 薔薇剪つて深く刺さす指の先島田賢一郎 
 梅雨の傘くるくる回す下校の児北村秀男