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| 厚(あつ)餡(あん)割ればシクと音して雲の峰 | |||
| 草田男(句集「銀河以前」昭和二十五年作) | |||
| 三十年生死の証(あかし)雲灼ける | |||
| 幻 魚(句集「幻魚」昭和五十年作) | |||
| 雲の峰ミットずぼりと球納む | |||
| 紫 晃(句集「遠汽笛」昭和三十八年作) | |||
今号では「雲」を取り合わせした句を取り上げ、雲に馳せる三師の思いを探ってみた。 草田男句の「厚餡」は造語で、薄皮饅頭の餡が透けている状態を模写したのだと言われ、具体的に「シク」と擬音語がまじり師の感性の深さを感じる句である。厚餡と雲の峰の照応は「詩的直感の極致」と宮脇白夜氏は評している。この二物配合は形状からは同質的に見えるが、常識的な取り合わせでは無く、私には発想も及ばない。
幻魚句は太平洋戦争の悲史を色濃く背負う句である。師は多くを語らなかったが、昭和十六年に兵役召集され、ソ・満国境、タイ、マレー、シンガポール等東南アジアを転戦し昭和二十一年に復員された。多くの戦友を失い、戦場の過酷な体験を経て戦後を生きてこられた。文筆では雄弁であった幻魚師も、戦争体験に関しては寡黙だったと思う。その寡黙なる心底が、この句の灼ける雲へ鮮烈に投影している。
紫晃句は炎天下、甲子園を目指す球児の投球練習風景と想定した。遠い雲の峰とキャッチャーミット捕球との取り合わせには若き熱情を感じた。青春賛歌として雲の峰が象徴的である。
(北童記)
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| 蟻の道水子地蔵の足元へ | 神田北童 | ||
| 廃屋に栗の花影ざわめけり | 〃 | ||
| 前垂れに埋もるる地蔵木下闇 | 〃 | ||
| 木下闇この大きさに身を委ね | 〃 | ||
| 青蘆や鉱毒川の名は消えず | 〃 | ||
| 深々と藍耽りたる七変化 | 〃 | ||
| 鳶の輪やどこまで続く雲の峰 | 〃 | ||
| 友偲ぶ青柿あまた落つる道 | 〃 | ||
| 志立てむ青嶺の重畳と | 〃 | ||
| 累々とダム埋むる岩灼くるのみ | 〃 | ||
| 松蝉の谺遠巻く砂防ダム | 〃 | ||
| 灼く石のなすまま砂防ダムの黙 | 〃 |
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| 晩歳のはらから揃ふ村祭 | 吉田長久 | ||
| 凌霄花揺らぐ我身も揺るがるれ | 川原澄子 | ||
| 生き様を託し夏越の大祓 | 浅野竹廣 | ||
| 涸ダムへ今生限りの蝉鳴けり | 古坂 房 | ||
| 玉菜剥く大地の雫手にこぼる | 長田五月 | ||
| 咲き継ぎてすでに天辺立葵 | 故・野口久 | ||
| ま青なる空へ背きて天女花 | 黒森敦子 | ||
| 凌霄の一花拾ひて母追ふ児 | 小林陽子 | ||
| 小波から大波と成り青田波 | 脇田 警 | ||
| 木下闇笠を目深に親鸞像 | 田中 和 | ||
| 荒ぶ川生みて青嶺の鎮もりぬ | 堀田芙美子 | ||
| 散る風を待つ一塊の蜘蛛の子よ | 宝田静子 | ||
| ゆるり舞ひ人を怖れぬ山の蝶 | 堀川悦子 | ||
| 花南天白寿の母の今有りし | 中田稔子 | ||
| 一口の総身に浸むる山清水 | 邑上春代 | ||
| 音色よきラッパの如し百合の花 | 窪田一青 | ||
| 薔薇剪つて深く刺さす指の先 | 島田賢一郎 | ||
| 梅雨の傘くるくる回す下校の児 | 北村秀男 |
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| 晩歳のはらから揃ふ村祭 | 吉田長久 | ||
| 凌霄花揺らぐ我身も揺るがるれ | 川原澄子 | ||
| 生き様を託し夏越の大祓 | 浅野竹廣 | ||
| 涸ダムへ今生限りの蝉鳴けり | 古坂 房 | ||
| 玉菜剥く大地の雫手にこぼる | 長田五月 | ||
| 咲き継ぎてすでに天辺立葵 | 故・野口久 | ||
| ま青なる空へ背きて天女花 | 黒森敦子 |
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| 凌霄の一花拾ひて母追ふ児 | 小林陽子 | ||
| 小波から大波と成り青田波 | 脇田 警 | ||
| 木下闇笠を目深に親鸞像 | 田中 和 | ||
| 荒ぶ川生みて青嶺の鎮もりぬ | 堀田芙美子 | ||
| 散る風を待つ一塊の蜘蛛の子よ | 宝田静子 | ||
| ゆるり舞ひ人を怖れぬ山の蝶 | 堀川悦子 | ||
| 花南天白寿の母の今有りし | 中田稔子 | ||
| 一口の総身に浸むる山清水 | 邑上春代 | ||
| 音色よきラッパの如し百合の花 | 窪田一青 | ||
| 薔薇剪つて深く刺さす指の先 | 島田賢一郎 | ||
| 梅雨の傘くるくる回す下校の児 | 北村秀男 |
