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| 飛び溜(たま)る燕の声を打あふぎ | |||
| 草田男(句集「長子」昭和十一年年刊) | |||
| 燕去(い)ぬ子よ今日よりは市塵に立て | |||
| 幻 魚(黒姫二十二号昭和二十四年作) | |||
| 巣つばめや三和土(たたき)の冷えを蹠(あしうら)に | |||
| 紫 晃(句集「遠汽笛」昭和四十八年作) | |||
師三人の「燕」主題の句を抽出した。草田男句は第一句集、春の項の燕三首の中の一句。燕は師が特に好んだ鳥と言われている。燕達が中空を過ぎり発し合う鳴声溜りを、仰ぎ見てこの句が生まれたことが直ぐ連想出来る。燕への感興が下五に収斂していると思う。句集の跋に「作品は直ちに作者の分身である」と記されているが、燕を師の分身と解してみた。
幻魚句には複雑な背景が潜んでいるのではと感じた。師は太平洋戦争に六年間の兵役に付き復員された体験があり、その心境が次の一文に残されている。 「六年間のカーキ色の世界から解かれて、家の青畳の上に戻った当座、市井の真中から田野の辺へ環境を移し晴耕雨読を考えた。しかし、日に増し現実の波の荒くなるのも加はって唯の夢と消えた。黒姫編輯後記より」この文章から推測し師の句を考えると、中七以降の「子よ今日よりは市塵に立て」の措辞は親を戦禍で失った遺児達への激励の言葉に聞こえる。そうすると「燕」が親の象徴であろう。
紫晃句には「木曽馬籠宿にて(国鉄文学会)」と前書がある。師が長年勤務されていた国鉄時代の文学愛好会の集いの旅路での作である。馬籠宿の旅籠での写生句。未だ屋内の巣に燕が居り、その天井の下の三和土を踏みしめて燕の巣を眺めていた風景である。三和土の描写で旅籠の風情が蘇り、藤村の「夜明け前」を彷彿とする。
(北童記)
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| 初旅や縁起(えんぎ)求めて越後路へ | 神田北童 | ||
| 初春の響きのやはき発車ベル | 〃 | ||
| 車窓まで雪煙たつ県境 | 〃 | ||
| 雪中のスイッチバック音滅す | 〃 | ||
| 年頭の波濤に会へり一人旅 | 〃 | ||
| 初春の波濤の響き胸元へ | 〃 | ||
| 笠島の磯波険し明の春 | 〃 | ||
| 海坂(うなさか)の鼠(ねず)一色に年迎ふ | 〃 | ||
| 初波の牙険しかる日本海 | 〃 | ||
| 汽船発ち蹌踉(そうろう)と舞ふ冬鴎 | 〃 | ||
| 年初め越後平野のだだびろし | 〃 | ||
| あら玉の大地踏みしめあるがまま | 〃 | ||
| 一人旅終ふあらたまの駅灯り | 〃 |
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| わが生きるかぎりは戦後ごまめ噛む | 吉田長久 | ||
| 七種のはつかに芽ぐむ籠きよら | 川原澄子 | ||
| 淑気満ち天空翔ける八咫(やた)烏 | 浅野竹廣 | ||
| 善し悪しき書かねば忘る初日記 | 古坂 房 | ||
| 戒尺の冴えて堂内鎮まれり | 長田五月 | ||
| 終ひ湯の初湯に変はる零時かな | 脇田 警 | ||
| 大達磨掲げ息衝く三九郎 | 小林陽子 | ||
| あらたまの光芒すがし雑木山 | 神田三布縷 | ||
| 鍋ひとつ幾役こなす年用意 | 田中 和 | ||
| 凍星や若き命の召されけり | 新島俊哉 | ||
| 友からの産直蜜柑日の匂ひ | 堀川悦子 | ||
| ポストには目出度さ厚く初新聞 | 櫻井半吉 | ||
| 蒼空へ真向かふ駒ケ岳の初景色 | 矢嶋ちか子 | ||
| 根上りの松の雄々しき雪の華 | 長崎 蕗 | ||
| 家族今ひとつとなりて大晦日 | 中田稔子 | ||
| 去年今年等身大の二人かな | 宇田まさお | ||
| 一山の枯れの中なる欠佛 | 武田代栄 | ||
| 終活もまたやり残し年終はる | 徳原キヨ子 |
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| わが生きるかぎりは戦後ごまめ噛む | 吉田長久 | ||
| 七種のはつかに芽ぐむ籠きよら | 川原澄子 | ||
| 淑気満ち天空翔ける八咫(やた)烏 | 浅野竹廣 | ||
| 善し悪しき書かねば忘る初日記 | 古坂 房 | ||
| 戒尺の冴えて堂内鎮まれり | 長田五月 | ||
| 終ひ湯の初湯に変はる零時かな | 脇田 警 |
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| 去年今年等身大の二人かな | 宇田まさお | ||
| 一山の枯れの中なる欠佛 | 武田代栄 | ||
| 終活もまたやり残し年終はる | 徳原キヨ子 |
