2020/03 No.438

 

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師の作品を学ぶ
       
 貝寄風かいよせに乗りて帰郷の船はや
  草田男(句集「長子」)
 東風寒し家出て知りし空の青
  幻 魚(句集「幻魚」昭和五十三年作)
 夜の東風を帰り我家の門燈欲し
  紫 晃(句集「遠汽笛」昭和四十二年作)

草田男句は第一句集「長子」の最初を飾る第一句目である。貝寄風とは歳時記に「大阪四天王寺の聖霊会(旧暦二月二十二日)の頃に吹く強い西風」とある。この旧暦を令和二年の新暦換算をすると三月十六日に当たる。その頃、草田男師が故郷の四国松山へ連絡船で帰った時の船旅での句。貝寄風は長く続かないがかなり強い風といわれるので、下五は実感なのかもしれない。宮脇白夜氏の解釈「迅しとは実は、その船速ではなく大学を無事卒業し就職も果し俳人としても着実に地歩を固めつつあった心の弾みそのものを表した言葉」を参考に鑑賞した。

幻魚句は長野市繁華街、権堂の自宅門前での句で、K姫百八十八号の巻頭十六句中の一句である。「東風寒く日毎に晴れて旅もせず」が続く。師の亡くなる前年の昭和五十三年の作品。当時、私は自宅でお会いした記憶があるが、先輩達の語る孤高・潔癖・直情径行・酒豪・バイタリストの幻魚像を全く感じ無かった。幻魚師が東風に吹かれ白髪を靡かせて空の青を仰ぐ姿を想像すると、何故か遊行僧の姿がかさなった。

紫晃句は師が四十二才の時の作品、現役の国鉄勤務時代であり、又、幻魚師を支持して活発に俳句活動も行っていた時代でもある。壮年期の勤務も日々厳しく忙しく、残業を終えて帰宅した時の状景を想定した。そして、東風の吹く中、自宅の門前に立ち、ふと漏らした一言がこの句の下五になったと連想した。二年後に、結社の大任を担うこと等は全く意中に無かったのではと思う。

(北童記)
 

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初御空
       
 濁流の声鎮めたる初茜神田北童 
 一歩踏む雲一つ無き初御空 〃 
 新年の響き凜乎と始発ベル 〃 
 年新た靄ゆるびゆく伊那平 〃 
 くわんおんへ百の石段初日さす 〃 
 両参り果たす頬笑み初詣 〃 
 被災樹に天命ありや初社 〃 
 言交はし絆新たに初句会 〃 
 わが道をゆくり行く早小正月 〃 
 初転びなすままにせむ又一歩 〃 
 ひたぶるに天空目指すどんどの火 〃 
 大寒の繊月せんげつ尖り極めたる 〃 
 雪嶺へ一途に真向く「家族像」 〃 

 

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黒姫抄
       
 翅も眼も西日に泛きし雪蛍奥原 修 
 未知の日へ望み大きく初暦古坂 房 
 冬帽子脱いで参れと閻魔の日長田五月 
 漆黒の御嶽たけ白々と初明り脇田 警 
 初晴や最後の乳歯天へ投ぐ小林陽子 
 初躓き社殿へつづく石畳田中 和 
 七草の揃はぬ粥をすすりたる半坂峰子 
 煮凝りや海辺育ちの夫の声宝田静子 
 初明り広げしままの旅の地図堀川悦子 
 膝をつき話す看護師冬日差櫻井半吉 
 春を待つ光の中の川の音宇田まさお 
 冬深し峡を見渡す朝の月矢嶋ちか子 
 狼煙上げ天夭々ようようと淑気かな中田稔子 
 枯木山昭和を残す窪み跡若月すすむ 
 水音に目覚め色増す竜の玉松下米子 
 明の春復活太鼓千曲辺に勝山千代枝 
 文旦の香り忘れぬ四国道伊藤智之 
 木枯や大きな夢を絵本載せ梶田三千代 

 

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博塵集 白塵集
       
 翅も眼も西日に泛きし雪蛍奥原 修 
 未知の日へ望み大きく初暦古坂 房 
 冬帽子脱いで参れと閻魔の日長田五月 
 漆黒の御嶽たけ白々と初明り脇田 警 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 初晴や最後の乳歯天へ投ぐ小林陽子 
 初躓き社殿へつづく石畳田中 和 
 七草の揃はぬ粥をすすりたる半坂峰子 
 煮凝りや海辺育ちの夫の声宝田静子 
 初明り広げしままの旅の地図堀川悦子 
 膝をつき話す看護師冬日差櫻井半吉 
 春を待つ光の中の川の音宇田まさお 
 冬深し峡を見渡す朝の月矢嶋ちか子 
 狼煙上げ天夭々ようようと淑気かな中田稔子 
 枯木山昭和を残す窪み跡若月すすむ 
 水音に目覚め色増す竜の玉松下米子 
 明の春復活太鼓千曲辺に勝山千代枝 
 文旦の香り忘れぬ四国道伊藤智之 
 木枯や大きな夢を絵本載せ梶田三千代