2020/05 No.439

 

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師の作品を学ぶ
       
 のぼりゆく草ほそりゆくてんと虫
  草田男(句集「長子」)
 せめてもの晴間十歩にあやめ池
  幻 魚(句集「幻魚」昭和五十三年作)
 身じろがぬ山女山音聞けるかに
  紫 晃(句集「雪解光」平成六年作)

草田男師のエッセイに・・「【自己を空しうして自然に対す」即ち「自然の生命と彼我一体に渾融した詩界を誕生せしめよ】」である。・・とあるが、今号はこの示唆されている常日頃(平生)不断に培われた姿勢で、自然の生命と向き合い溶け合い生まれた句を三人の師の句集から抽出した。

先ず、草田男句は平明で誰もが直ぐに理解できる句である。第一句集「長子」掲載の句。句集跋に「自己の命とその成長に忠実であり、自然・人生・社会の前につつましく畏惶(いこう)(恐れかしこむ)する心根を保ち続けてきた。」とあり、その心根を持って、天道虫の草を登っていくさまを描写しその生命に作者の分身が溶け合っているのではと私流に解釈させていただいた。

幻魚句は師が逝去される一年前に須坂臥竜公園を訪れた時の作品。師の傍らで私は小間使いをしていたので遙か遠き記憶に残る一句。公園の菖蒲池は今年も見事なあやめを咲かせている。当日は五月雨模様であり、師の言動は自然体で穏やかそのものであった。気付かなかったが師は病途上での菖蒲池との対面であった。

紫晃句は、この句が生まれる前年から晩年苦しまれた病魔にとりつかれ、その後亡くなる迄の十年間を闘病生活された。師は謹厳実直で篤実なお人柄なので、当然、自然・人生・社会とつつましく対峙する心根で、身じろがぬ山女の姿に接しこの一句が生まれたのだと推測させていただいた。

(北童記)
 

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春動く
       
 冬深し瓦礫の河原去年のまま神田北童 
 河原荒れ瀬のなすままに春近し 〃 
 戦艦史繙く父の忌の余寒 〃 
 斑雪野はだれのの影濃き一樹父の忌や 〃 
 鯉の鰭水面にきらり春めけり 〃 
 春鴨の羽ばたき気負ひ水しぶく 〃 
 春風や遠く和讃を聴くごとし 〃 
 波羅密多寺門出づれば春の月 〃 
 膨らみつ光を弾く桜の芽 〃 
 枝先の小梅二輪のあどけなし 〃 
 稜線の毅然と余寒迫りくる 〃 
 春燈下見えぬ奈落のコロナ菌 〃 
 光帯び木の芽自在にうごめけり 〃 

 

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黒姫抄
       
 万歩課す坂の宿場や春遅し吉田長久 
 連なれる遠嶺しろがね鳥帰る三浦真佐子 
 九品佛会へる高ぶり花馬酔木長峯寿子 
 神棚に手作り藁の宝船佐野 明 
 しらうをの鼓動あふるるたなごころ徳久芳拙 
 啓蟄や増えし酒量に仰天す小山まさ志 
 肩越しにふんはり日の出春の山岩原和子 
 御嶽山の紺に溶けゆく冬茜宮下陽子 
 山映しふはりふはりとしやぼん玉上坂とし子 
 涅槃図に見入る幼の身を固む梅本香折 
 炬燵居やニュースコロナに明け暮るる堀田芙美子 
 老ゆる身に春愁は無し大笑す今村芳巨 
 ゑぐられし河川を悼む初御空霜田嘉子 
 水仙や天を突き上ぐフエニックス長崎 蕗 
 髪切つてルージュ濃きめや春シューズ川野晶功 
 「ビリーブ」に涙せし日よ卒業歌大畑杉子 
 安曇野を一色にして春霞邑上春代 
 空つぽの厩の雪解雫かな植原洋子 

 

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博塵集 白塵集
       
 万歩課す坂の宿場や春遅し吉田長久& 
 連なれる遠嶺しろがね鳥帰る三浦真佐子 
 九品佛会へる高ぶり花馬酔木長峯寿子 
 神棚に手作り藁の宝船佐野 明 
 しらうをの鼓動あふるるたなごころ徳久芳拙 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 啓蟄や増えし酒量に仰天す小山まさ志 
 肩越しにふんはり日の出春の山岩原和子 
 御嶽山の紺に溶けゆく冬茜宮下陽子 
 山映しふはりふはりとしやぼん玉上坂とし子 
 涅槃図に見入る幼の身を固む梅本香折 
 炬燵居やニュースコロナに明け暮るる堀田芙美子 
 老ゆる身に春愁は無し大笑す今村芳巨 
 ゑぐられし河川を悼む初御空霜田嘉子 
 水仙や天を突き上ぐフエニックス長崎 蕗 
 髪切つてルージュ濃きめや春シューズ川野晶功 
 「ビリーブ」に涙せし日よ卒業歌大畑杉子 
 安曇野を一色にして春霞邑上春代 
 空つぽの厩の雪解雫かな植原洋子