2020/09 No.441

 

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師の作品を学ぶ
       
 なにもかも失せて薄の中の路
  草田男(句集「長子」)
 一尾ぬ尾花雨晴れさて歩け
  幻 魚(句集「幻魚」昭和四十八年作)
 行列の尾に付く村童枯芒
  紫 晃(句集「青山椒」昭和五十八年作)

草田男句を私流に解釈すると、「視界の全ての色彩が失せて薄のみが広がる野の中に一本の道が前方へひとすじに伸びている。」と明解である。そして此の一筋の道が、心の焦点でもあり、師の写生論での「対象と心の焦点が一体となる道」であると解釈した。その根拠として、句集「長子」跋の中の「自然・人生・社会の前に慎ましく畏まる心根を保つことが私の信念であり、唯一の生きて行く道」とあり、この一節を参考にした。草田男師の生きて行く道は芭蕉の「無能無才にしてこの一筋に繋がる・幻住庵の記」の言葉通りであると感じた。

幻魚句は黒姫百六十二号・安曇白馬行連作の中の一句。谷川での山女魚獲りでの作。岸辺の薄の花穂に小雨が降る中、漸く山女魚を一尾獲ると雨が丁度上がり、「もっと此の道を歩け」と言われてるようだと述懐する句。雨降りで山女魚はあまり獲れなかったのであろう。幻魚師の歩く道は、いつも現実にめげず日々句作に求める執念の道で逝去一ヶ月前迄続く。幻魚師終焉の病床八句(黒姫百九十六号)が心に残る。その一句・・「又泣くの」白衣が笑ふ「もう秋よ」・・(一九七九年十月)

紫晃句は木曽・妻籠宿の文化文政風俗絵巻之行列に出会った時の連作句の一句。紫晃師は木曽薮原駅長の任を果たされ鳥居峠俳句大会には長年選者・運営に携われて木曽の歴史文化には明るい方だった。句の行列とは地元住民百三十名程の人々が、武士・浪人・鳥追い女・駕籠かき・飛脚・虚無僧など扮し、文化文政時代の宿場の風俗を再現する。列の後尾に次世代を引き継ぐ村童が続く。行列の道は木曽の歴史・文化の道で、師は俳句文芸の分野で木曽の文化に貢献されてきた。

(北童記)
 

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初夏の足踏み
       
 花栗の香のむんむんと迫りくる神田北童 
 白薔薇の覗く生垣門戸閉づ 〃 
 若楓下枝上枝しづえほつえの弾みたる 〃 
 独り居へほつほつ落つる柿の花 〃 
 花アカシアよよと枝垂れてにべもなし 〃 
 優しさを人に告げたる片白草 〃 
 青桐の大樹のうれに白き雲 〃 
 人影の去り声まろぶ青蛙 〃 
 やみくもに腕上りくる蟻一途 〃 
 川挟み声さぐり合ふ行々子 〃 
 濁流の怒声なしたる出水川 〃 
 白風南しらはえに乗る綿雲の闊達に 〃 
 岳へ向き深く息する朝涼し 〃 

 

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黒姫抄
       
 空けてある堂宇筒抜け松の蝉奥原 修 
 その昔食べし酸葉の土手に増ゆ古坂 房 
 足裏より小さき悲鳴柿の花長田五月 
 青田波休耕田に飲み込まれ脇田 警 
 朝ぼらけ蓮の散華の音微か徳久芳拙 
 おもねらず風のなすまま水馬小林陽子 
 万緑や我が白髪に引け目なし田中 和 
 トンネンルに雨漏る異様梅雨豪雨堀川悦子 
 一面の刈るには惜しき赤詰草吉村郁子 
 終日の雨に怯ゆる七月尽半坂峰子 
 夏草の真つ只中で鎌振るふ宇田まさお 
 針槐香り微かに日の暮るる櫻井半吉 
 抽んでて河骨の花黄を点す矢嶋ちか子 
 落ち梅を漬けて甘かり琥珀色中田稔子 
 草刈りを夫嘆くともひたに刈る塚本瑛子 
 大瑠璃の鳴きて童話を抜けいだ梶田三千代 
 追ひかけて母の被せる夏帽子佐藤澄子 
 幼子の両手広げて風薫る小山重征 

 

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博塵集 白塵集
       
 空けてある堂宇筒抜け松の蝉奥原 修 
 その昔食べし酸葉の土手に増ゆ古坂 房 
 足裏より小さき悲鳴柿の花長田五月 
 青田波休耕田に飲み込まれ脇田 警 
 朝ぼらけ蓮の散華の音微か徳久芳拙 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 おもねらず風のなすまま水馬小林陽子 
 万緑や我が白髪に引け目なし田中 和 
 トンネンルに雨漏る異様梅雨豪雨堀川悦子 
 一面の刈るには惜しき赤詰草吉村郁子 
 終日の雨に怯ゆる七月尽半坂峰子 
 夏草の真つ只中で鎌振るふ宇田まさお 
 針槐香り微かに日の暮るる櫻井半吉 
 抽んでて河骨の花黄を点す矢嶋ちか子 
 落ち梅を漬けて甘かり琥珀色中田稔子 
 草刈りを夫嘆くともひたに刈る塚本瑛子 
 大瑠璃の鳴きて童話を抜けいだ梶田三千代 
 追ひかけて母の被せる夏帽子佐藤澄子 
 幼子の両手広げて風薫る小山重征