2021/03 No.444

 

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師の作品を学ぶ
       
 雲雀の曇天掻き分け掻き分けて
  草田男(昭和二十二年作・句集「来し方行方」)
 田には鳩畑には烏草には芽
  幻 魚(昭和五十一年作・黒姫百七十五号)
 謀るかに一羽は見張る寒烏
  紫 晃(昭和六十年作・黒姫二百二十八号)

草田男師は戦前より句作の傍ら、メルヘンを創作しており、この句はそのメルヘンとも大いに関連していると言われている。昭和二十四年にメルヘン発表は中断されたが、この句の中の雲雀は多くの戦争犠牲者の魂救済の仲介をする役割を持つと宮脇白夜氏は指摘する。その背景に立ち鑑賞すると、曇天の上空は戦争犠牲者の御霊の世界と考えることも許されると思う。草田男師は戦時中「壮行や深雪に犬のみ腰おとし」の句で知られる反戦俳人でもあり戦後、俳壇における俳人の戦争責任を追及する姿勢をとった一人である。雲雀の鳴く音は曇天をどこまでも掻き分けてゆく鎮魂の歌と受け止めたい。

幻魚句は黒姫百七十五号巻頭十九句「負けないよ」の中の一句。この句の一句前に・草の芽や視力に気力「負けないよ」・・の句が並ぶ。師はこの三年後に急逝するが、その天命は誰も知る由もない。この頃、視力・気力の衰えを感じていたのかも知れない。そこで、師の句は草の芽、鳩と烏の活動的な動きに自ずと写生眼が動きこの一句が生まれたのではと追想した。この年、師は太平洋戦争で各地を四年間転戦後、復員し帰還三十年を迎えていた背景がある事も付記したい。

紫晃句は黒姫二百二十八号の巻頭句「寒烏奸計」七句中の一つ。烏の知能は人間に学習したり識別能力を持つ等かなりのレベルがある事で知られているが、其処に着眼した句である。人間の社会環境を利用し、都市圏に針金やプラスチックで営巣したり、人間の男女を識別して行動したり、道路に胡桃を置いて車で殻を割らせる等の奸計を身に付けていると考えると、見張りの寒烏が空恐ろしく迫りくる。

(北童記)
 

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大 旦
       
 年の瀬のラジオに響くカンタータ神田北童 
 冬の日の弧を膨らませ岳へ落つ 〃 
 烈風の抜け行く鉄路雪の声 〃 
 黒姫山くろひめの裾の伸びゆく大旦 〃 
 元朝の雪踏む音の心地好し 〃 
 初烏姿見せずに声を張る 〃 
 謹厳に堰の水落つ初山河 〃 
 畳々と郷関の嶺々初日影 〃 
 松が枝の初日をこぼす参道に 〃 
 日へ真向き神に真向きし初詣 〃 
 寒に入る日輪薄き弧の揺らぐ 〃 
 大寒や点る神灯明々と 〃 
 瀬戸内の牡蛎届き友遙かなり 〃 

 

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黒姫抄
       
 コロナ禍も歴史の一部山眠る三浦真佐子 
 医王殿までの急坂龍の玉長田五月 
 息遣ひ潜めて冬芽天を指す脇田 警 
 福寿草憂ひの世にも変りなく徳久芳拙 
 音も無くきて音となる初時雨田中 和 
 薪を積む冬の長さを案じつつ堀川悦子 
 白一色清しき今朝の初景色吉村郁子 
 待春や天地返しの土の声宇田まさお 
 初鏡紅一刷毛の華やぎを長崎 蕗 
 返らざる月日たたみし古暦矢嶋ちか子 
 初暦繰りて新たなとき始む櫻井半吉 
 縋りつつ雪の石段お社へ中田稔子 
 一人居の心に石蕗の花明り工藤チトミ 
 八十路過ぎ荷送るりんご自信作中澤圭子 
 小正月安らぐ日々を願ひつつ西 絹代 
 地球儀をゆつくり回し年惜しむ佐藤富子 
 海を背に黒侘助の俯きぬ半田 満 
 寒の入り閂堅き古寺の門佐藤澄子 

 

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博塵集 白塵集
       
 コロナ禍も歴史の一部山眠る三浦真佐子 
 医王殿までの急坂龍の玉長田五月 
 息遣ひ潜めて冬芽天を指す脇田 警 
 福寿草憂ひの世にも変りなく徳久芳拙 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 音も無くきて音となる初時雨田中 和 
 薪を積む冬の長さを案じつつ堀川悦子 
 白一色清しき今朝の初景色吉村郁子 
 待春や天地返しの土の声宇田まさお 
 初鏡紅一刷毛の華やぎを長崎 蕗 
 返らざる月日たたみし古暦矢嶋ちか子 
 初暦繰りて新たなとき始む櫻井半吉 
 縋りつつ雪の石段お社へ中田稔子 
 一人居の心に石蕗の花明り工藤チトミ 
 八十路過ぎ荷送るりんご自信作中澤圭子 
 小正月安らぐ日々を願ひつつ西 絹代 
 地球儀をゆつくり回し年惜しむ佐藤富子 
 海を背に黒侘助の俯きぬ半田 満 
 寒の入り閂堅き古寺の門佐藤澄子