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| 白鳥といふ一巨花を水に置く | |||
| 草田男(句集「来し方行方」昭和十八年作) | |||
| 椋鳥とぶや信濃峡田の土の波 | |||
| 幻 魚(黒姫百十三号・昭和三十年作) | |||
| 戻り来て母なる湖に浮寝鴨 | |||
| 紫 晃(句集「青山椒」昭和五十九年作) | |||
草田男句は白鳥を巨花(大きな花)に譬えて、白鳥が水に浮く状態を「巨花を水に置く」(置く・・あるがままの位置にとどめる)と断定の表現をしている。この一句一章の下五での強調が私には印象に残った。草田男師の言葉に「自然(造化)とは俳句の素材ではなく、人間の内面を触発する存在である」とある如く、師の内面の意志を強く感じる句である。この句の時代背景は昭和十八年、太平洋戦争の真っ只中である。未曾有の戦時での混沌と窮乏の中から新たな一歩を踏み出そうとして師の意志が「巨花」に結晶していると考えてみた。
幻魚句は、椋鳥飛来の写生句である。山国信濃には南北に伸びる大河・千曲川・木曽川・天竜川等、大小河川が沢山あり、その川沿いに峡田が耕作されている風景にはよく出合う。峡田の多くは年末迄に冬耕が済み土の波のうねりが黒々と広がり、その上空を椋鳥の群が飛来してくる風景。群棲すると鳴声が甚だ騒がしく異様な景でもある。田に餌を求める椋鳥の生き様を暗示した句である。幻魚師も俳句に己の生き様を生涯求め、「句は己の形であり影である」という信念で句作されていた。
紫晃句は鴨が冬季を過ごす為に、湖に戻ってきた光景。信濃にある湖・池には越冬するための鴨が沢山飛来するが、抱卵・子鴨育てをする夫婦鴨も混じる。そこで生れ育ち、旅立ち又戻り来る鴨も群の中に存在する。浮寝鴨には戻りきた湖を母郷とする鴨達が沢山いるのである。「大自然は慈母であり厳父である」と言われているが、慈母の一面を紫晃師はこの一句の浮寝鴨で余さず表現されている。
(北童記)
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| 黒姫山に雲の侍るや秋近し | 神田北童 | ||
| 秋蝉の声の渦なす山の墓 | 〃 | ||
| 立秋や経木塔婆の香の新た | 〃 | ||
| 厨子古りし堂囲みたる虫の声 | 〃 | ||
| 朝風の楚々とすり抜く女郎花 | 〃 | ||
| 蜩の挙りて山に谺する | 〃 | ||
| 新涼や池の細波影連れて | 〃 | ||
| 帽を脱ぎ総身に受くる涼新た | 〃 | ||
| 秋霖を目深に森の音も無し | 〃 | ||
| 足元に蜻蛉近寄る小路かな | 〃 | ||
| つつましく蕾をほどく藤袴 | 〃 | ||
| 風の薙ぐ野のコスモスの茫茫と | 〃 | ||
| コロナ禍の別世界なる天高し | 〃 |
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| 鵙高音晴れて隈なき甲斐の国 | 井上ひさ子 | ||
| ほぐるるにあと一瞬の酔芙蓉 | 吉田春子 | ||
| 汽水湖のさざ波綺羅と今朝の秋 | 浅野竹廣 | ||
| 夕暮の水場の明り秋海棠 | 古坂 房 | ||
| 赤とんぼ夕日のなほも赤く燃ゆ | 長峯寿子 | ||
| 一刹那途切れて更に虫すだく | 小林陽子 | ||
| 撫子や友の優しさ咲く色に | 岩原和子 | ||
| 毬栗の落ちる気配や身を縮め | 小山まさ志 | ||
| 蜩の遠く近くに駒ヶ岳の暮る | 上坂とし子 | ||
| 鬼灯熟る仲良しの友遠く去る | 堀田芙美子 | ||
| 土と火と雨の匂ひや秋の暮 | 宇田まさお | ||
| 龍胆や慎ましき人横に居り | 今井絹江 | ||
| 空蝉の今は何処で鳴きをるや | 中田稔子 | ||
| 姥百合の雨に煙りてほの傾ぐ | 佐藤富子 | ||
| 一斉に鳴きては止みぬ蝉時雨 | 邑上春代 | ||
| せせらぎに睦む二匹の糸とんぼ | 勝山千代枝 | ||
| 墓地清め明日にも芽ぶく曼珠沙華 | 中澤圭子 | ||
| 月見草廃線跡に黄を灯す | 石田富子 |
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| 鵙高音晴れて隈なき甲斐の国 | 井上ひさ子 | ||
| ほぐるるにあと一瞬の酔芙蓉 | 吉田春子 | ||
| 汽水湖のさざ波綺羅と今朝の秋 | 浅野竹廣 | ||
| 夕暮の水場の明り秋海棠 | 古坂 房 | ||
| 赤とんぼ夕日のなほも赤く燃ゆ | 長峯寿子 |
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| 一刹那途切れて更に虫すだく | 小林陽子 | ||
| 撫子や友の優しさ咲く色に | 岩原和子 | ||
| 毬栗の落ちる気配や身を縮め | 小山まさ志 | ||
| 蜩の遠く近くに駒ヶ岳の暮る | 上坂とし子 | ||
| 鬼灯熟る仲良しの友遠く去る | 堀田芙美子 | ||
| 土と火と雨の匂ひや秋の暮 | 宇田まさお | ||
| 龍胆や慎ましき人横に居り | 今井絹江 | ||
| 空蝉の今は何処で鳴きをるや | 中田稔子 | ||
| 姥百合の雨に煙りてほの傾ぐ | 佐藤富子 | ||
| 一斉に鳴きては止みぬ蝉時雨 | 邑上春代 | ||
| せせらぎに睦む二匹の糸とんぼ | 勝山千代枝 | ||
| 墓地清め明日にも芽ぶく曼珠沙華 | 中澤圭子 | ||
| 月見草廃線跡に黄を灯す | 石田富子 |
