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| 新馬鈴薯や農夫掌よく乾き | |||
| 草田男(句集「来し方行方」昭和二十一年作) | |||
| みみしひの哀しき蝉を掌にはわす | |||
| 幻 魚(黒姫二十一号。昭和二十二年作) | |||
| 老鶯や独りの幅の湖の道 | |||
| 紫 晃(句集「遠汽笛」昭和五十一年作) | |||
草田男句は太平洋戦争が敗戦となった翌年の作。無謀な戦争に突き進み多くの犠牲者と多大な戦禍を積み上げた日本の昭和史が背景となる作品と考えると、此の句への連想は更に深まる。宮脇白夜氏の解説に次の言葉がある。「草田男はトルストイの孫弟子と言ってよい。彼は太陽と大地の絶大な恩恵を受け、その力を借りて穀物や野菜を収穫し、それを糧として生きることこそ、人間生活の原点であると考えていた。」この言葉の原点を貫いた句である。農夫の乾いた掌に転ぶ新馬鈴薯は正に新たな命の象徴であり平和の証である。
参考「農業こそ万人にふさわしい、最大の独立性と幸福とを与える唯一の職業・トルストイ」幻魚句は弱者の命と尊厳を大切にする師の心が滲む一句である。この句は師が太平洋戦争から復員した一年後の作。無謀な戦争での悲惨な体験から、特に生命や人権の尊重を痛感していた時の作品。師の掌に這わす耳聾(みみしい)の蝉の小さな命を尊ぶ願いが如実に表現されている。蝉を這わす掌の感触から、哀しい蝉の言葉が師の心に届いたのかもしれない。
紫晃師は「黒姫の理念」で・「句は己のために生み続ける」(蓄財・名声・栄達のためでは無くて、己の心の眼を開くため。)・・と示唆されているが、この句はその理念を具体的に自然描写で表現している。老鶯を求めて湖を廻る小径を写生し、独りで歩む己の姿を想定して、俳句は己のために作り続けるのであり、昨日の自分に飽き足らず常に前を見続けるのだと主張している様に思えた。
(北童記)
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| 無人家の山茱萸の花明々と | 神田北童 | ||
| 空おほふ辛夷の花の讃歌あり | 〃 | ||
| いくたびも瀬を行き来する岩燕 | 〃 | ||
| 老桜四方に散りゆくたたずまひ | 〃 | ||
| 穀雨待つ菜園の畝ととのふや | 〃 | ||
| 「一握の砂」読みかけて春惜しむ | 〃 | ||
| 満天星の花の譜風に揺れ動く | 〃 | ||
| 山門をくぐれば躑躅燃え盛る | 〃 | ||
| 花曇墓苑まぢかに鳶の笛 | 〃 | ||
| 鐘楼の丈越え若葉吹く老樹 | 〃 | ||
| 百々川へ百尾列ぬる鯉幟 | 〃 | ||
| 揺らぎなく天突く栃の花大樹 | 〃 | ||
| 風運ぶ遠郭公の声いづこ | 〃 |
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| 記念樹もいまや壮年花万朶 | 三浦真佐子 | ||
| 初夏の風一気にぬける埴輪の眼 | 浅野竹廣 | ||
| 花吹雪塔の風鐸鳴り継げり | 長田五月 | ||
| 尖塔のクルス際立つ春日和 | 脇田 警 | ||
| 木曽川の石に小躍り水温む | 稲沢礼子 | ||
| 天心の太陽抱く大代田 | 小林陽子 | ||
| 郭公の一村仕切り啼き通す | 岩原和子 | ||
| 遙かなる國の侵略穀雨かな | 小山まさ志 | ||
| 春の風ちりめん皺の池の波 | 堀川悦子 | ||
| ふと触れし牡丹一気に崩れけり | 奥原昭子 | ||
| 余花の里令和の御代は家二軒 | 大家惟男 | ||
| 蒼天に白が眩しき花林檎 | 北村秀男 | ||
| 春暁や朱傘の僧の数珠を受く | 川野晶功 | ||
| 花冷えや戦禍のニュース胸塞ぐ | 大畑杉子 | ||
| ものの芽の息吹き聞こえる木曽路かな | 長岡春美 | ||
| 水温み水上バイク飛沫上ぐ | 半田 満 | ||
| 傾きし空家にひそとクロッカス | 邑上春代 | ||
| 梅干しで今日も目覚めの一日を | 宮澤文規 |
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| 記念樹もいまや壮年花万朶 | 三浦真佐子 | ||
| 初夏の風一気にぬける埴輪の眼 | 浅野竹廣 | ||
| 花吹雪塔の風鐸鳴り継げり | 長田五月 | ||
| 尖塔のクルス際立つ春日和 | 脇田 警 | ||
| 木曽川の石に小躍り水温む | 稲沢礼子 |
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| 天心の太陽抱く大代田 | 小林陽子 | ||
| 郭公の一村仕切り啼き通す | 岩原和子 | ||
| 遙かなる國の侵略穀雨かな | 小山まさ志 | ||
| 春の風ちりめん皺の池の波 | 堀川悦子 | ||
| ふと触れし牡丹一気に崩れけり | 奥原昭子 | ||
| 余花の里令和の御代は家二軒 | 大家惟男 | ||
| 蒼天に白が眩しき花林檎 | 北村秀男 | ||
| 春暁や朱傘の僧の数珠を受く | 川野晶功 | ||
| 花冷えや戦禍のニュース胸塞ぐ | 大畑杉子 | ||
| ものの芽の息吹き聞こえる木曽路かな | 長岡春美 | ||
| 水温み水上バイク飛沫上ぐ | 半田 満 | ||
| 傾きし空家にひそとクロッカス | 邑上春代 | ||
| 梅干しで今日も目覚めの一日を | 宮澤文規 |
