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| 秋雨や線路の多き駅につく | |||
| 草田男(句集「長子」昭和初期) | |||
| 秋降るや心にも降る一夜降 | |||
| 幻 魚(黒姫百七十二号。昭和五十年作) | |||
| 秋天へ貨車放つ旗振り上げる | |||
| 紫 晃(句集「遠汽笛」昭和三十七年作) | |||
草田男句は第一句集「長子」より抽出したが、この句は師の大学生時代の作品と記されている。年譜を調べ、東大時代・三十才前後の独身時代に、秋雨の中、一人旅での汽車の窓外風景の作品と解った。「単調な田園風景。刈り取られた田圃。藁(に)塚(お)が雨に濡れ物寂しく見える。そのうち風景が少しずつ変り家並が現れ舗装路も見えてくる。暫くすると急に窓外の視野に多く線路の入り組む終着駅構内が現れた。」と連想してみた。実は、この句の風景と全く同じ状景を飯山線(JR越後川口―長野駅)の一人旅で私も体験した。時候も秋時雨の午後。到着した長野駅構内は秋灯が点いていた。
幻魚句は晩年六十六才の時、黒姫百七十二号巻頭句「夏果つ」三十六句の中の一つ。この句は「一物仕立て」で「秋雨」を心象として掘り下げている。師は「俳句道即人間道」を信念としたが雑念にも妨げられた。この句は、その逡巡とした思惑を「秋雨が心にも降る」と述懐された。その経緯が同号巻頭の言葉に記されている。「この頃私の句作には言葉の斡旋と修辞だけに囚われ感動が直撃してない。言葉上手と作り物でしか無い。内なるものの湧出と外なるものへ一如一躍が欠けている。頭が先で心が後になっている」
紫晃句は壮年期の作品。師は一貫して国鉄に勤務されており、この句は駅のホームで連結された貨車列への発車を手に持つ旗で指示された日常勤務の一端を直叙した作品である。いつも背筋をピンと張っている師の姿を懐かしく思い起こした。草田男句の風景とは対照的な作品でもある。
今号の三師の句は解りやすいが、落ち着いて鑑賞すると奥行きがある。まさに「作品が作者の形であり影である」ことを改めて示唆された思いである。
(北童記)
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| 朝涼や山鳩の声いづこから | 神田北童 | ||
| 夕風にぼうたんの紅解き放つ | 〃 | ||
| 満遍に水輪立つ池走り梅雨 | 〃 | ||
| 梅雨深し一川の音くぐもりぬ | 〃 | ||
| 白百合の川風へ向きうなづけり | 〃 | ||
| 咲き初むる紫陽花の藍うごめきし | 〃 | ||
| 立葵見据うる先に追悼碑 | 〃 | ||
| 晴れ渡る梢の山雀ツツピイーと | 〃 | ||
| いつの間に雷雲の消ゆ夕時鐘 | 〃 | ||
| 夏蝶のよぎる水面の乱れなし | 〃 | ||
| 川向こう華やぐ合歓の花浄土 | 〃 | ||
| 梢まで青蔦這はす老大樹 | 〃 | ||
| 今朝も又真向く青嶺に何を問ふ | 〃 |
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| 十薬の花や静かな祈りあり | 吉田春子 | ||
| 研ぎ立ての刃切れよき音草を刈る | 古坂 房 | ||
| 牡丹散りなほ面影に紅の立つ | 長峯寿子 | ||
| 浜木綿の群落近き殉教碑 | 徳久芳拙 | ||
| 松籟や静けさまとふ蟻地獄 | 新島俊哉 | ||
| 星まつり「九ちゃんの歌」口遊む | 田中 和 | ||
| 短夜や浅き夢見し目覚めかな | 神田三布縷 | ||
| 半夏生「中乗りさん」の昼チャイム | 上坂とし子 | ||
| 田草取り渡り来る風背に優し | 吉村郁子 | ||
| 道草も楽しからずや落し文 | 堀田芙美子 | ||
| 万緑に埋もれし峡の地蔵堂 | 宇田まさお | ||
| 見るうちに家並消し去る白雨かな | 櫻井半吉 | ||
| 盆棚の出征馬にも供養され | 茅野裕彦 | ||
| 世の中の憂ひ隠せる里若葉 | 長岡春美 | ||
| 高く咲く桐むらさきの風を呼び | 佐藤澄子 | ||
| 白牡丹父へ一枝枕上 | 佐藤富子 | ||
| 野菜畑ひらり止まりし黒揚羽 | 西 絹代 | ||
| 木下闇句帳抱へてさ迷ひぬ | 生路光子 |
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| 十薬の花や静かな祈りあり | 吉田春子 | ||
| 研ぎ立ての刃切れよき音草を刈る | 古坂 房 | ||
| 牡丹散りなほ面影に紅の立つ | 長峯寿子 | ||
| 浜木綿の群落近き殉教碑 | 徳久芳拙 | ||
| 松籟や静けさまとふ蟻地獄 | 新島俊哉 |
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| 星まつり「九ちゃんの歌」口遊む | 田中 和 | ||
| 短夜や浅き夢見し目覚めかな | 神田三布縷 | ||
| 半夏生「中乗りさん」の昼チャイム | 上坂とし子 | ||
| 田草取り渡り来る風背に優し | 吉村郁子 | ||
| 道草も楽しからずや落し文 | 堀田芙美子 | ||
| 万緑に埋もれし峡の地蔵堂 | 宇田まさお | ||
| 見るうちに家並消し去る白雨かな | 櫻井半吉 | ||
| 盆棚の出征馬にも供養され | 茅野裕彦 | ||
| 世の中の憂ひ隠せる里若葉 | 長岡春美 | ||
| 高く咲く桐むらさきの風を呼び | 佐藤澄子 | ||
| 白牡丹父へ一枝枕上 | 佐藤富子 | ||
| 野菜畑ひらり止まりし黒揚羽 | 西 絹代 | ||
| 木下闇句帳抱へてさ迷ひぬ | 生路光子 |
