2022/11 No.454

 

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師の作品を学ぶ
       
 紅葉焚きし灰やしばらく火を含む
  草田男(昭和三十九年作)
 石蹴れば石に音なし露寒し
  幻 魚(黒姫百九十一号。昭和五十三年作)
 百日紅負けじと返り花掲ぐ
  紫 晃(黒姫三百四十七号。平成十七年作)

今回は三師共に自然諷詠句より抽出。草田男句は晩年六十四才の作品。この句には師の自解文がある。「抜萃・秋川渓谷の寺の境内に紅葉の枝が剪定され焚かれている光景に遭遇した。手を添えて完全燃焼させ了えた。いかにも真白な灰の清潔さはひたすら快かった。・・・・

山気の動きと圧力が加わるたび何度でも灰の内部から可成鮮やかに火の色が蘇ってくる。それが火の色へ、同時にあたたかい血の色にも通じる活力の復活じみて、眺めている眼に喜ばしかった」・・師は心に燃える感情を率直に解説している。改めて、草田男師の言葉「自然は俳句の素材ではなく人間の内面を触発する存在である」が浮んできた。

幻魚句は解りやすい句である。一読して胸に落ちる。師は俳句実作上での注意点を常に分かりやすく教示してくれた。特に「嘘を句に作るな」「己の足で得た目と心の通った句を作れ」「俳句は只今(現在)を詠む詩」「俳句の背後に人生観を燃やせ」という言葉が心に残る。この句は幻魚師が己の足で石を蹴り石の応答を待つ状景であるが、無言で佇む毅然とした姿が先ず浮んできた。「石の無音」は「世情の反響」で、「露寒し」を「厳しき環境」と考えれば、石を蹴ったその一瞬、句を通して師は己の生き方の究明をしたのであろう。

紫晃句は百日紅の返り花を詠んだ句であるが、八十路を目前にした師が、今、己の目で得た躍動感を表現した句である。返り花に「負けじ」と表現した気魄が心底に湧き上がってきたのは何故だろうかと考えて見た。師の八十路後半は、不治の病魔との闘いに苦労されたが、此の時、既に気掛かりとなる気配を感じて、それを払拭しようとする気持が百日紅の返り花に注がれたのではと解釈した。

三師の句は、共に句の背後に人生観を示してくれている。

(北童記)
 

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鰯 雲
       
 黒蟻のづかづか膝をのぼりくる神田北童 
 茗荷の子一蓮塔の片隅に 〃 
 叢雲の立つ黒姫山の秋隣 〃 
 水の音風の音にも秋隣る 〃 
 二の腕を擦る朝風涼新た 〃 
 秋口の宵の半月つれづれに 〃 
 一族の一誠一和墓掃除 〃 
 送火の煙の先へ耳澄ます 〃 
 秋蝉の万感を込め鳴く響き 〃 
 宿業しゅくごうの外つ国遙か鰯雲 〃 
 鰯雲列整えて移りゆく 〃 
 鰯雲大樹の真上おおひたり 〃 
 帯なして山陵つなぐ鰯雲 〃 

 

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黒姫抄
       
 敗戦日むら雲ふつと雨こぼす三浦真佐子 
 幣揺るる両部鳥居へこぼれ萩浅野竹廣 
 坐禅石の端に残暑の杖休め長田五月 
 青胡桃落ち行く先の沢の音脇田 警 
 さはやかや句碑をにはかの雨洗ふ宮下陽子 
 稲架襖ぬひ響きたる子等の歌小林陽子 
 きざはしはなごみの場とや虫の声小山まさ志 
 ウクライナと空は一枚盆供養堀川悦子 
 冷し瓜今日の暮しをただしみる山瀬やす子 
 穂並びの育みに辞儀水落とす梅本香折 
 秋天や雲に優しさ戻りけり北村秀男 
 何時の間に畑一面露葎中田稔子 
 夕散歩路傍に折れし蛍草高野東山 
 朝霧や今日も山鳩二羽で来る梶田三千代 
 穂も間近大室山の青芒半田 満 
 寝覚めよし秋めく風に背伸びして松下米子 
 拉致の海越えて流るる天の川工藤チトミ 
 風そよぎ万緑の木々共鳴す石田富子 

 

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博塵集 白塵集
       
 敗戦日むら雲ふつと雨こぼす三浦真佐子 
 幣揺るる両部鳥居へこぼれ萩浅野竹廣 
 坐禅石の端に残暑の杖休め長田五月 
 青胡桃落ち行く先の沢の音脇田 警 
 さはやかや句碑をにはかの雨洗ふ宮下陽子 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 稲架襖ぬひ響きたる子等の歌小林陽子 
 きざはしはなごみの場とや虫の声小山まさ志 
 ウクライナと空は一枚盆供養堀川悦子 
 冷し瓜今日の暮しをただしみる山瀬やす子 
 穂並びの育みに辞儀水落とす梅本香折 
 秋天や雲に優しさ戻りけり北村秀男 
 何時の間に畑一面露葎中田稔子 
 夕散歩路傍に折れし蛍草高野東山 
 朝霧や今日も山鳩二羽で来る梶田三千代 
 穂も間近大室山の青芒半田 満 
 寝覚めよし秋めく風に背伸びして松下米子 
 拉致の海越えて流るる天の川工藤チトミ 
 風そよぎ万緑の木々共鳴す石田富子