2023/05 No.457

 

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師の作品を学ぶ
       
 青蛙土下座ならずと高鳴ける
  草田男 (句集「美田」昭和三十年作)
 蠅生る玻璃の穢れは拭かしめず
  幻 魚 (黒姫百六号 昭和三十年作)
 地を割りし水仙確と蕾抱く
  紫 晃 (黒姫三百四十三号 平成十六年作)

草田男師の此の句が発表された時は「俳句の社会性・人間性」が論議された時代。師は、「作者の主体性を裏付けした抒情と、その時代を如何に生きるかを命題として作品を生み出す努力が必要」と指摘。このような背景で句を読むと理解しやすい。この句の中七、土下座は江戸時代の大名行列を百姓・町人が路傍に平伏し迎える無言で下向く状態であるが、青蛙は四肢を折り土下座しているような姿勢でも、目を斜め上へ向け力強く高鳴いている。戦後、「一千万人餓死説」も流れ食糧危機が最も深刻だった。これは戦争による耕地の荒廃や農業労働力の不足、供出や配給制度の混乱等が原因。この時代を如何に生きたかを青蛙に象徴した作品と解した。

幻魚句は黒姫同人制度を確立した昭和三十年四月号、巻頭句の中の一句。この年に草田男師を招き「長野県萬緑会」を創立し幻魚主宰が支部長に就任。この句の解釈は「生まれた蠅は玻璃に残した跡(人間は穢れと呼ぶ)を誰にも拭かさせない。」と師が己自身に反問している句と考えてみた。「蠅」は玻璃に止まると穢れていると思われているが、師はその常識に異を唱えているのだ。幻魚俳句観の一つに次の言葉がある。「俳人は人に阿ず、人に衒わず詩眼で自らの詩心を磨け」(いづこにあっても己の主体性は失わない)と、この句で示唆しているのである。

紫晃句は写生句をつらぬいており句意が読者の心へ真直ぐひびく作品。前掲の二句とは異なり句作の基本である写生手法を厳しく守っている。「本当に写生をすると己の作品がどれ位リアリティがあるかを自分で判断する自選力が出る。草田男」の言葉を紫晃師は確と守るリゴリスト(厳格主義者)でもある。
三師がそれぞれの時代を如何に生きたかが、三師の句から見えたであろうか。

(北童記)
 

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冴返る
       
 句友逝くあしたの雲の凍てしまま神田北童 
 忽然と訃報届きて冴返る 〃 
 急逝の句友何処いずくへ冴返る 〃 
 寒明けの雲払はれし空仰ぐ 〃 
 剪定枝焚く煙いちづ天目指す 〃 
 立春や明けの半月宙に浮く 〃 
 川幅に光るさざなみ春浅し 〃 
 県都の灯きらめく盆地余寒満つ 〃 
 父の忌の残る昭和史二月尽 〃 
 春の宵連山の影稜々と 〃 
 泰然と黒姫山くろひめつつむ朝霞 〃 
 春一番土手の松籟勇みたる 〃 
 銀嶺に又も春雪輝きし 〃 

 

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黒姫抄
       
 花の春待たずに忽と句友逝く吉田春子 
 恙なく高鳴る水音木の根開く古坂 房 
 山の宮静か白梅こぼれ咲く長田五月 
 桧山眠りをさます雪解川稲沢礼子 
 立春や輸送機ゆるり旋回す新島俊哉 
 神木の綾なす枝や百千鳥田中 和 
 春空へ導く声のとんびの輪岩原和子 
 温厚な人柄惜しむ彼岸西風吉村郁子 
 峡住まひ弥生の月の輝きぬ堀田芙美子 
 春愁ふ物言ひたげなこけしかな奥原昭子 
 耕して帰る媼やシニアカー北村秀男 
 雪解けてこんなところに道祖神宇田まさお 
 閉校の長き廊下や名残雪川野晶功 
 遠州路竹林すべて竹の秋高野東山 
 雛壇に猫ちやつかりと鎮座して梶田三千代 
 句の友の訃報耳にしなほ余寒西 絹代 
 春待たず思ひ出残し句友逝く松下米子 
 冬ざれの棚田に響く遠汽笛石田富子 

 

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博塵集 白塵集
       
 花の春待たずに忽と句友逝く吉田春子 
 恙なく高鳴る水音木の根開く古坂 房 
 山の宮静か白梅こぼれ咲く長田五月 
 桧山眠りをさます雪解川稲沢礼子 
 立春や輸送機ゆるり旋回す新島俊哉 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 神木の綾なす枝や百千鳥田中 和 
 春空へ導く声のとんびの輪岩原和子 
 温厚な人柄惜しむ彼岸西風吉村郁子 
 峡住まひ弥生の月の輝きぬ堀田芙美子 
 春愁ふ物言ひたげなこけしかな奥原昭子 
 耕して帰る媼やシニアカー北村秀男 
 雪解けてこんなところに道祖神宇田まさお 
 閉校の長き廊下や名残雪川野晶功 
 遠州路竹林すべて竹の秋高野東山 
 雛壇に猫ちやつかりと鎮座して梶田三千代 
 句の友の訃報耳にしなほ余寒西 絹代 
 春待たず思ひ出残し句友逝く松下米子 
 冬ざれの棚田に響く遠汽笛石田富子