2023/09 No.459

 

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師の作品を学ぶ
       
 追分より上げ道下げ道きりぎりす
  草田男 (句集「火の島」)昭和十四年作
 四肢太く子は田子の孫虫跳ぬか
  幻 魚 (K姫百四十八号)昭和四十六年作
 邯鄲の鳴き合ふ汀去り惜しむ
  紫 晃 (K姫二百三十八号)昭和六十一年作

草田男句集「火の島」には、信濃居として三十四句が掲載されている。師は昭和十一年から数年間夏の軽井沢の山荘へ足を運んでいる。そしてカトリック教会のミサへ妻に導かれて通ったと年譜にあった。その際に、軽井沢周辺(現、中軽井沢・追分)を散策して、三十四句の作品が生まれた。この草田男句はその中の一つ。この句を解説した宮脇白夜氏の次の一文が、句の情景を明解に描写解説。「晴れた浅間の全容を右手に見ながら当時まだ車の少ない上下にうねりのある国道を小諸に向かって、沓掛。追分と辿って行く作者の若々しい夏帽の姿が彷彿とする。道端の叢で鳴いているのは確かにきりぎりすである」私も追分宿周辺を散策して実感を以て追想してみた。

幻魚句は師の長女が嫁ぎ先で出産した初孫の一才を迎えた時の句である。長女の嫁ぎ先は農家で、夫の父は田子(農夫)であり農業を主に暮らしていたと思われる。農家の健康な血筋であり初孫は嬰児の時から四肢が太く健康に恵まれて「よく遊びよく食べよく寝る」子であったのだ。師が孫を訪ねてその孫の太い四肢を見て、飛蝗や蝗等の虫類と取り合わせして「虫跳ぬか」と象徴的に表現した句である。四肢太き孫を眺め満足気な師の笑顔が浮かんでくる。

紫晃句は「邯鄲玲瓏」と題名を付された主宰句の一つ。邯鄲の鳴声は「ルルルルルルルル」と連続して鳴く。汀で聞くその声は正に玲瓏そのもの。「儚げに響く邯鄲の声」とも言われているが、名が中国の故事「邯鄲の夢」に由来するからかもしれない。現実に鳴声を聞くと何故か心が揺り動かされる様でもある。紫晃師は邯鄲の声に聞き惚れ暫し呆然と佇んで生まれた一句。下五にその心根が具体的な行動として表現されている。今回は三師の“虫”を詠む句を取り上げたが、異なる観点の背景に垣間見える三師の生き方が興味深い。

(北童記)
 

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遠浅間
       
 紅薔薇の彩にじませる雨雫神田北童
 六月の雲重たげに尾根を越ゆ 〃 
 鬼百合のぽかり口開く畑の隅 〃 
 掌にふくよかな紅さくらんぼ 〃 
 吾が影を過り宙へと夏燕 〃 
 梅雨靄を抜けて小浅間現れし 〃 
 青葉風追分宿の森深し 〃 
 夏草を薙ぎゆく風や遠浅間 〃 
 遠浅間キャベツ畑の果てしなく 〃 
 風涼し隧道長き五里ケ峰 〃 
 花合歓の睫毛の揺るる池のおも 〃 
 涼風のはこぶ瀬音の優しけり 〃 
 夕蝉のきちきちきちと鳴き終ふ 〃 

 

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黒姫抄
       
 老木にまだある未来松の芯吉田春子 
 瀬を覆ひ空を支へる花水木古坂 房 
 夕焼に友と染められ歩を急ぐ稲沢礼子 
 谿深し木霊のやうに河鹿鳴く新島俊哉 
 志高き友あり夏の雲小林陽子 
 三千歩目指す力の一夜酒ひとよざけ田中 和 
 野にも出づわらび授かる雨上がり岩原和子 
 野薊を無残に倒す草刈機吉村郁子 
 雑草てふ草は無しとか草むしり堀田芙美子 
 木曽谷の青葉の虜いま暫し山瀬やす子 
 郭公の明るき声や豪雨去る北村秀男 
 母偲ぶ母の遺せし梅酒古る宇田まさお 
 一門の墓の静もる木下闇佐藤澄子 
 粗塩を手にきしきしと梅を漬く長岡春美 
 そそぐ母の形見のブリキ如露佐藤富子 
 青葉闇かよふ人無き百度石北沢久子 
 零れ種健気に伸びる百日草岡田裕衣子 
 田水満ち畑は黒々芒種かな中澤圭子 

 

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博塵集 白塵集
       
 老木にまだある未来松の芯吉田春子 
 瀬を覆ひ空を支へる花水木古坂 房 
 夕焼に友と染められ歩を急ぐ稲沢礼子 
 谿深し木霊のやうに河鹿鳴く新島俊哉 
 志高き友あり夏の雲小林陽子 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 三千歩目指す力の一夜酒ひとよざけ田中 和 
 野にも出づわらび授かる雨上がり岩原和子 
 野薊を無残に倒す草刈機吉村郁子 
 雑草てふ草は無しとか草むしり堀田芙美子 
 木曽谷の青葉の虜いま暫し山瀬やす子 
 郭公の明るき声や豪雨去る北村秀男 
 母偲ぶ母の遺せし梅酒古る宇田まさお 
 一門の墓の静もる木下闇佐藤澄子 
 粗塩を手にきしきしと梅を漬く長岡春美 
 そそぐ母の形見のブリキ如露佐藤富子 
 青葉闇かよふ人無き百度石北沢久子 
 零れ種健気に伸びる百日草岡田裕衣子 
 田水満ち畑は黒々芒種かな中澤圭子