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冬浜を一川の紺裁ち裂ける | |||
草田男(句集「火の島」昭和十三年) | |||
日々ひとり胸中火なり木の葉髪 | |||
幻 魚(句集「黒姫一八五号」昭和五十三年) | |||
マスクして一つの我意を鎮めけり | |||
紫 晃(句集「青山椒」昭和五十五年) |
俳誌として新たな節目を迎える号に相応しい句を得たいと三人の師の作品を繙いた。草田男師の句は第二句集より得た。この句は九十九里浜での写生句。「砂浜を大きな布に喩え、貫流する小川を鋭利な刄物になぞられ、その刃物で白布を一気に裁ち裂いた。裂帛という言葉に相応しい。宮脇白夜氏解」の様に、壮年期の英気と気迫に満ちた作品である。
幻魚師の句は逝去される一年前の作。芭蕉句「旅に病で夢は枯野をかけ廻る」に通じる句と思う。当時の師の編集後記に「書籍を床の間に積み、声なき声の木枯のような叫びを、一人ぢっとこらえて全身を耳にし毎夜聞いてる。愚者よ努めよ励め。」とある。晩年の尽きぬ創作意欲を象徴した句だ。
紫晃師の句は、主宰継承され間も無い頃の作品である。師の謹厳実直で円満な人格を実証する様な作品。結社の頂点に立つ己を律する「謙遜」の一語に尽きる句と思った。無料寿経の「和顔愛語・先意承問」の「先意承問」の姿勢だと感じた。
この三句から「気迫」「意欲」「謙遜」の示唆を得て、又、われわれは遠い道程を今日から歩み始める。(北童記)
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櫨紅葉朱に焦がれつつ日に真向く | 神田北童 | ||
櫨紅葉燃えて没日を使ひきる | 〃 | ||
流木の傷に野分の声残り | 〃 | ||
夜長の灯教行信証読み難し | 〃 | ||
立冬の空の潔癖仰ぎたる | 〃 | ||
朝しぐれ犬に曳かれつ漢ゆく | 〃 | ||
時雨るるや此岸彼岸のへだてなし | 〃 | ||
心経に息ととのへし霜の朝 | 〃 | ||
落葉鳴るくるぶしまでも埋もるる歩 | 〃 | ||
昇る日に霜の溶けゆく声かすか | 〃 | ||
愚に還れよ霜野の果てを見詰めたる | 〃 |
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十夜堂指の先まで手をあはす | 菅原あや子 | ||
の玉とし賞づる炒り銀杏 | 川原澄子 | ||
反骨の剛気に構ふいぼむしり | 浅野竹廣 | ||
鬼の子も人恋しくて「すみれ句碑」 | 長田五月 | ||
綿虫や握手の温み掌に残る | 野口 久 | ||
ゑのこ草握りしままに眠る吾子 | 小林陽子 | ||
入日影日すがら燻る籾殻火 | 長瀬吉毅 | ||
母看取る窓の高さに天の川 | 宝田静子 | ||
追悼のハングルの碑や虫時雨 | 西澤麻紗子 | ||
炊き上る新米の香にほほ笑めり | 田中君枝 | ||
行く秋や各駅停車の客となる | 田中 和 | ||
峡の日の移る先へと柿を干す | 堀川悦子 | ||
星空を見上げ干柿吊るしたり | 奥原昭子 | ||
銀杏散る一気呵成といふ言葉 | 本多紀男 | ||
後の月ひとつの嘘を悔みをり | 笹沢ワカ子 | ||
パレットに紅葉の色を搾りをる | 工藤チトミ |
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神の留守知るや高鳴き朝鴉 | 中宮寺立夫 | ||
峰の月離れて峰の際だてり | 吉田長久 | ||
十夜堂指の先まで手をあはす | 菅原あや子 | ||
の玉とし賞づる炒り銀杏 | 川原澄子 | ||
反骨の剛気に構ふいぼむしり | 浅野竹廣 | ||
鬼の子も人恋しくて「すみれ句碑」 | 長田五月 | ||
まさに今木曽路は緋の道紅葉燃ゆ | 古畑泰絵 |
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綿虫や握手の温み掌に残る | 野口 久 | ||
里山の荒廃著し吾亦紅 | 大家惟男 | ||
ゑのこ草握りしままに眠る吾子 | 小林陽子 | ||
を眺むる安堵夕日落つ | 梅本香折 | ||
入日影日すがら燻る籾殻火 | 長瀬吉毅 | ||
母看取る窓の高さに天の川 | 宝田静子 | ||
追悼のハングルの碑や虫時雨 | 西澤麻紗子 | ||
炊き上る新米の香にほほ笑めり | 田中君枝 | ||
行く秋や各駅停車の客となる | 田中 和 | ||
峡の日の移る先へと柿を干す | 堀川悦子 | ||
星空を見上げ干柿吊るしたり | 奥原昭子 | ||
銀杏散る一気呵成といふ言葉 | 本多紀男 | ||
後の月ひとつの嘘を悔みをり | 笹沢ワカ子 | ||
パレットに紅葉の色を搾りをる | 工藤チトミ |