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手の薔薇に蜂来れば我王の如し | |||
草田男(句集「長子」) | |||
薔薇白ししづかに夕の日の去ンぬ | |||
幻魚(句集「幻魚」) | |||
父へ剪る遺愛の薔薇咲くかぎり | |||
紫晃(句集「雪解光」) |
薔薇に心を寄せる師の句を、三師の句集其々から得た。草田男師の句は、自解に「ルオーの“老いたる王”の画を見出し感動して」と記されている。その王とは旧約聖書のダビテだと宮脇白夜氏の解説にある。師は亡くなる寸前に洗礼を受けてカトリック信者になられたが、生前は昭和の芭蕉とも称せられ、作品の多くには求道的精神が常に存在すると私は思っている。「老いたる王」はルオーの代表的宗教画(1937年作)で横向きの王が手に花を持つ構図であり、まさに、此の句の原型である。師はダビテ王の心境だったのだろうか。
幻魚句の薔薇は夕闇に浮かぶ幻想的な色調である。幻魚師青春時代まっ只中の作であり、詩作から俳句へ転向した時の初期の作品。詩才迸るような表現で無く穏やか写生句であるが、「夕の日の去ンぬ」の下句に韻を踏む独特の幻魚調が脈打っている。
紫晃師の句は還暦を過ぎ県俳協の要職にも着き、俳人として一番充実された晩年期作品。前掲二句の薔薇と異なり、薔薇を人の絆とする人間愛に満ちた作品で、師の完成された人格が滲みでた句である。又、祈りに満ちた作品でもある。
(北童記)
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雪掻きて誰も訪ねず訪ね来ず | 神田北童 | ||
雪掻きを仕舞ひ一番星仰ぐ | 〃 | ||
悔悟のやう高塀沿ひに残る雪 | 〃 | ||
祈念像天指す指に風光る | 〃 | ||
風光る遺構煉瓦に祈り満つ | 〃 | ||
爆心地木の芽かこみて慰籍の声 | 〃 | ||
被爆地と結ぶ瀬戸海春遅々と | 〃 | ||
湾口へ白波を刷き光る風 | 〃 | ||
上陸碑建つ入江まで風光る | 〃 | ||
春寒の指に尖りて疼きたる | 〃 | ||
春寒や両足を垂る殉教像 | 〃 | ||
風眩し蒼天見上げ殉教像 | 〃 |
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錨下す音をも包む大霞 | 菅原あや子 | ||
冴返る竹人形のうつろな瞳 | 浅野竹廣 | ||
したたかに積りしものよ名残雪 | 友部古鷹 | ||
校舎跡あらがふがごと冬木の芽 | 増田正 | ||
菩提寺のはしぶと鴉春を鳴く | 田中公平 | ||
雪解雫五百羅漢の目がうごく | 長峯寿子 | ||
豪雪のしじま切り裂く救急車 | 稲沢礼子 | ||
酷寒の渓裂帛の音放つ | 大家唯男 | ||
隙歯なる笑顔眩しく卒園す | 小林陽子 | ||
皸も亡き妻偲ぶ因かな | 長瀬吉毅 | ||
習吟の飴に頼りぬ春の風邪 | 牛山徳治郎 | ||
頑張れと話し掛けつつ寒肥す | 塚本瑛子 | ||
ひと日降り二尺二寸の雪を掻く | 山瀬やす子 | ||
二楽章終るしじまや二月尽く | 本多紀男 | ||
里宮の氷柱弧をなす山颪 | 徳久芳拙 | ||
腰までも埋る一歩や深雪晴 | 松本千代美 |
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万歩課す春一番に背を押され | 吉田長久 | ||
錨下す音をも包む大霞 | 菅原あや子 | ||
冴返る竹人形のうつろな瞳 | 浅野竹廣 | ||
したたかに積りしものよ名残雪 | 友部古鷹 | ||
校舎跡あらがふがごと冬木の芽 | 増田正 | ||
菩提寺のはしぶと鴉春を鳴く | 田中公平 | ||
雪解雫五百羅漢の目がうごく | 長峯寿子 | ||
豪雪のしじま切り裂く救急車 | 稲沢礼子 |
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酷寒の渓裂帛の音放つ | 大家唯男 | ||
隙歯なる笑顔眩しく卒園す | 小林陽子 | ||
皸も亡き妻偲ぶ因かな | 長瀬吉毅 | ||
習吟の飴に頼りぬ春の風邪 | 牛山徳治郎 | ||
犬ふぐり間近に見てる空の色 | 半坂峰子 | ||
頑張れと話し掛けつつ寒肥す | 塚本瑛子 | ||
ひと日降り二尺二寸の雪を掻く | 山瀬やす子 | ||
避け合ふて言葉のなごむ雪の道 | 奥原昭子 | ||
二楽章終るしじまや二月尽く | 本多紀男 | ||
里宮の氷柱弧をなす山颪 | 徳久芳拙 | ||
腰までも埋る一歩や深雪晴 | 松本千代美 | ||
鳥の声蔵の戸塞ぎ残る雪 | 矢嶋ちか子 |