2014/5 No.403

 

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師の作品を学ぶ
       
 手の薔薇に蜂来れば我王の如し
  草田男(句集「長子」)
 薔薇白ししづかに夕の日の去ンぬ
  幻魚(句集「幻魚」)
 父へ剪る遺愛の薔薇咲くかぎり
  紫晃(句集「雪解光」)

薔薇に心を寄せる師の句を、三師の句集其々から得た。草田男師の句は、自解に「ルオーの“老いたる王”の画を見出し感動して」と記されている。その王とは旧約聖書のダビテだと宮脇白夜氏の解説にある。師は亡くなる寸前に洗礼を受けてカトリック信者になられたが、生前は昭和の芭蕉とも称せられ、作品の多くには求道的精神が常に存在すると私は思っている。「老いたる王」はルオーの代表的宗教画(1937年作)で横向きの王が手に花を持つ構図であり、まさに、此の句の原型である。師はダビテ王の心境だったのだろうか。

幻魚句の薔薇は夕闇に浮かぶ幻想的な色調である。幻魚師青春時代まっ只中の作であり、詩作から俳句へ転向した時の初期の作品。詩才迸るような表現で無く穏やか写生句であるが、「夕の日の去ンぬ」の下句に韻を踏む独特の幻魚調が脈打っている。

紫晃師の句は還暦を過ぎ県俳協の要職にも着き、俳人として一番充実された晩年期作品。前掲二句の薔薇と異なり、薔薇を人の絆とする人間愛に満ちた作品で、師の完成された人格が滲みでた句である。又、祈りに満ちた作品でもある。

(北童記)
 

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風光る
       
 雪掻きて誰も訪ねず訪ね来ず神田北童 
 雪掻きを仕舞ひ一番星仰ぐ 〃 
 悔悟のやう高塀沿ひに残る雪 〃 
 祈念像天指す指に風光る 〃 
 風光る遺構煉瓦に祈り満つ 〃 
 爆心地木の芽かこみて慰籍の声 〃 
 被爆地と結ぶ瀬戸海春遅々と 〃 
 湾口へ白波を刷き光る風 〃 
 上陸碑建つ入江まで風光る 〃 
 春寒の指に尖りて疼きたる 〃 
 春寒や両足を垂る殉教像 〃 
 風眩し蒼天見上げ殉教像 〃 

 

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黒姫抄
       
 錨下す音をも包む大霞菅原あや子 
 冴返る竹人形のうつろな瞳浅野竹廣 
 したたかに積りしものよ名残雪友部古鷹 
 校舎跡あらがふがごと冬木の芽増田正 
 菩提寺のはしぶと鴉春を鳴く田中公平 
 雪解雫五百羅漢の目がうごく長峯寿子 
 豪雪のしじま切り裂く救急車稲沢礼子 
 酷寒の渓裂帛の音放つ大家唯男 
 隙歯なる笑顔眩しく卒園す小林陽子 
 皸も亡き妻偲ぶ因かな長瀬吉毅 
 習吟の飴に頼りぬ春の風邪牛山徳治郎 
 頑張れと話し掛けつつ寒肥す塚本瑛子 
 ひと日降り二尺二寸の雪を掻く山瀬やす子 
 二楽章終るしじまや二月尽く本多紀男 
 里宮の氷柱弧をなす山颪徳久芳拙 
 腰までも埋る一歩や深雪晴松本千代美 

 

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博塵集 白塵集
       
 万歩課す春一番に背を押され 吉田長久 
 錨下す音をも包む大霞菅原あや子 
 冴返る竹人形のうつろな瞳浅野竹廣 
 したたかに積りしものよ名残雪友部古鷹 
 校舎跡あらがふがごと冬木の芽増田正 
 菩提寺のはしぶと鴉春を鳴く田中公平 
 雪解雫五百羅漢の目がうごく長峯寿子 
 豪雪のしじま切り裂く救急車稲沢礼子 

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
 酷寒の渓裂帛の音放つ大家唯男 
 隙歯なる笑顔眩しく卒園す小林陽子 
 皸も亡き妻偲ぶ因かな長瀬吉毅 
 習吟の飴に頼りぬ春の風邪牛山徳治郎 
 犬ふぐり間近に見てる空の色半坂峰子 
 頑張れと話し掛けつつ寒肥す塚本瑛子 
 ひと日降り二尺二寸の雪を掻く山瀬やす子 
 避け合ふて言葉のなごむ雪の道奥原昭子 
 二楽章終るしじまや二月尽く本多紀男 
 里宮の氷柱弧をなす山颪徳久芳拙 
 腰までも埋る一歩や深雪晴松本千代美 
 鳥の声蔵の戸塞ぎ残る雪矢嶋ちか子