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壮行や深雪に犬のみ腰をおとし | |||
草田男(句集「来し方行方」昭和十五年) | |||
心ひとつ胸ひとつ雁みなかへり | |||
幻 魚(黒姫二十九号昭和二十三年) | |||
乗鞍岳の天のみ染めて冬没日 | |||
紫 晃(句集「遠汽笛」昭和三十七年) |
本年は戦後七十周年を迎え、太平洋戦争を知らない世代へ戦争の犠牲と悲劇の歴史・反戦の決意を如何に引き継ぐか問われてる。俳句もその一端を担えるであろうか。そこで、戦争について三人の師の心のありようを、作品鑑賞を通し私なりに考察してみた。草田男師の句は反戦俳句として戦後論争のあった句であるが、壮行の喧騒の中に、じっと腰を落して考えてる犬は師の反戦の決意と解釈させて貰った。開戦一年前の作である。
幻魚師は四年間の戦役の後、昭和二十一年復員した。満州から東南アジア各地に転戦した体験が深く心の傷として残り、この句にはその痛みが何処かに潜むと感じてる。帰雁の声と姿が、その象徴として師の胸中に去来したのである。
紫晃師の句は太平洋戦争と直接に関連がないが、私は「冬没日」を過去の戦争の悲劇と解し、乗鞍岳の天を三百万人の戦没犠牲者の声が染めてると感じとった。冬没日が遺したものを、どの様に謙虚に受け止めるか、戦後七十周年を迎えるあたり、その教訓を心して噛みしめたい。
(北童記)
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元朝の神灯かくも鎮もりぬ | 神田北童 | ||
初日待つ総身ゆるびなく構へ | 〃 | ||
堂宇冴ゆ無言の祈り身をつつむ | 〃 | ||
本尊のまなかひ殊に冴え返る | 〃 | ||
御影堂一念燃ゆる膝の冷え | 〃 | ||
親鸞の心眼隔て堂凍つる | 〃 | ||
冴え返り本願満つる御影堂 | 〃 | ||
底冷えの仏足跡に身を屈め | 〃 | ||
初祈り専修念仏為し難し | 〃 | ||
冬銀河散華の海へつながりし | 〃 | ||
慰霊碑にいくとせの黙雪しぐれ | 〃 | ||
読初やたどたどしくも歎異抄 | 〃 |
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がふがふと怒涛逆巻く大旦 | 菅原あや子 | ||
年祝ぐや鳥は尾を振り頭振り | 三浦真佐子 | ||
釜掛ける心新たや去年今年 | 川原澄子 | ||
若水を硯の海へ湛へたる | 浅野竹廣 | ||
異国語の飛び交ふ天守初山河 | 村田 守 | ||
松取れし山よりの風荒びたり | 古坂 房 | ||
戒壇の千年の闇錠冴ゆる | 長田五月 | ||
初灯よろずの神に赦し乞ふ | 野口 久 | ||
猪口一杯夫に付き合ふ明の春 | 青木増江 | ||
目出度さを遠くに置きて初日待つ | 脇田 警 | ||
這ひ這ひの上げる片手よ初笑ひ | 上坂とし子 | ||
極月の第九に込めし和の祈り | 神田三布縷 | ||
改めて見る覚え書き年用意 | 半坂峰子 | ||
七草や一病を得て存へり | 本多紀男 | ||
気を締めて酢茎作りに一日過ぐ | 西 絹代 | ||
こつこつと蕎麦切る音に除夜の鐘 | 長崎 蕗 |
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がふがふと怒涛逆巻く大旦 | 菅原あや子 | ||
凩にどつしり乗りし怒涛音 | 工藤チトミ | ||
年祝ぐや鳥は尾を振り頭振り | 三浦真佐子 | ||
釜掛ける心新たや去年今年 | 川原澄子 | ||
若水を硯の海へ湛へたる | 浅野竹廣 | ||
異国語の飛び交ふ天守初山河 | 村田 守 | ||
松取れし山よりの風荒びたり | 古坂 房 | ||
戒壇の千年の闇錠冴ゆる | 長田五月 |
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初灯よろずの神に赦し乞ふ | 野口 久 | ||
猪口一杯夫に付き合ふ明の春 | 青木増江 | ||
目出度さを遠くに置きて初日待つ | 脇田 警 | ||
這ひ這ひの上げる片手よ初笑ひ | 上坂とし子 | ||
極月の第九に込めし和の祈り | 神田三布縷 | ||
喉宥む飴のまろやか飴市に | 今村芳巨 | ||
改めて見る覚え書き年用意 | 半坂峰子 | ||
七草や一病を得て存へり | 本多紀男 | ||
売初の多国語記す福袋 | 徳久芳拙 | ||
年新たまず歳時記を座右にす | 矢嶋ちか子 | ||
気を締めて酢茎作りに一日過ぐ | 西 絹代 | ||
継ぎ歯にて恐る恐るの雑煮餅 | 高野東山 | ||
こつこつと蕎麦切る音に除夜の鐘 | 長崎 蕗 |