2016/05 No.415

 

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師の作品を学ぶ
       
 松籟や百日の夏来りけり
  草田男(昭和十三年作・句集「火の鳥」)
 山住に溢るる一井夏来る音
  幻 魚(昭和二十九年作・句集「幻魚」)
 口中に拡がるハッカ夏旅へ
  紫 晃(昭和四十三年作・句集「遠汽笛」)

草田男師は夏の作家と言われ、この一句はそれを象徴する。更に「毒消し飲むやわが詩多産の夏来る」の句もあり、夏の作家として自他ともに許す。夏は立夏(五月五日頃)に始まり約百日間あるが、師の誕生日は七月二十四日で、「夏を四季の中で最も愛した」と愛弟子の宮脇白夜氏は述懐してる。松籟の中に佇み夏を迎えてる、颯爽とした不惑の師の姿を想定した。

幻魚師の句は山里を訪れた際の一句。そこに湧きいでる清水の音に、夏の近づく確かな足音を聞いたのである。信州に湧清水の名水は所々にあるが、北信濃木島平村・龍興寺の「平成の名水百選」の湧水は印象に残る。その一井に幻魚師の句を重ねてみた。

紫晃師の夏は、「旅」への誘いの一句。国鉄マンとして人生を過された師の旅は、列車ダイヤを効率的に配慮した計画的な旅だったのだろうか。長年、「萬緑」の幹部同人としても全国を吟行されたであろう。ハッカの爽やかな香りに、この句を作った壮年時代の師の清新な気迫を感じる。

(北童記)
 

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春 光
       
 たまはりし二ン月の日を膝に乗せ神田北童 
 はばからず声を放てよ「鬼は外」 〃 
 絶間なく息づく雫牡丹雪 〃 
 春禽の影よぎる空斯くも晴る 〃 
 春光を総身に浴ぶ空無辺 〃 
 注ぎたるコーヒーカップ春光る 〃 
 なびかずに一川(いっせん)に沿ふ春霞 〃 
 釈迦堂へまねく灯明春寒き 〃 
 禅堂の額字のびやか春浅し 〃 
 雉鳩も雀も睦ぶ下萌に 〃 
 春光やひときは明し城櫓 〃 
 伸びるだけ伸ぶ稜線や山笑ふ 〃 

 

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黒姫抄
       
三千歩課す大寒の坂の町吉田長久
寒戻るとや健やかな背骨あり三浦真佐子
崩れたる石棺点す鼓草長峯寿子
教へたり教へられたり水温む森泉 透
雛の宴柾目の香る檜箸稲沢礼子
豁然と霞打ち敷く八ヶ岳長瀬吉毅
空つぽの墓の花立て春を待つ脇田 警
思ひきり髪を短く春立つ日宝田静子
紙雛の瞳少女に戻りゐる堀田芙美子
頭上より励ますごとく寒鴉田中君枝
大寒や輝きの増す一つ星塚本瑛子
戦せぬ国なればこそ梅真白本多紀男
小走りの息白々と始発駅今井絹江
縁小春安曇訛りの長話吉田裕子
青き踏む孫先になり後になり塩野入靖夫
卒業式「信濃の国」に気持込め邑上春代
捨て畑に瑠璃一面のいぬふぐり徳原キヨ子
野仏の際に流るる芹の水島田賢一郎

 

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博塵集 白塵集
       
三千歩課す大寒の坂の町吉田長久
寒戻るとや健やかな背骨あり三浦真佐子
崩れたる石棺点す鼓草長峯寿子
教へたり教へられたり水温む森泉 透
雛の宴柾目の香る檜箸稲沢礼子

 

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机塵集 清塵集(同人・会員)
       
豁然と霞打ち敷く八ヶ岳長瀬吉毅
空つぽの墓の花立て春を待つ脇田 警
思ひきり髪を短く春立つ日宝田静子
紙雛の瞳少女に戻りゐる堀田芙美子
頭上より励ますごとく寒鴉田中君枝
大寒や輝きの増す一つ星塚本瑛子
戦せぬ国なればこそ梅真白本多紀男
小走りの息白々と始発駅今井絹江
縁小春安曇訛りの長話吉田裕子
青き踏む孫先になり後になり塩野入靖夫
卒業式「信濃の国」に気持込め邑上春代
捨て畑に瑠璃一面のいぬふぐり徳原キヨ子
野仏の際に流るる芹の水島田賢一郎