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松籟や百日の夏来りけり | |||
草田男(昭和十三年作・句集「火の鳥」) | |||
山住に溢るる一井夏来る音 | |||
幻 魚(昭和二十九年作・句集「幻魚」) | |||
口中に拡がるハッカ夏旅へ | |||
紫 晃(昭和四十三年作・句集「遠汽笛」) |
草田男師は夏の作家と言われ、この一句はそれを象徴する。更に「毒消し飲むやわが詩多産の夏来る」の句もあり、夏の作家として自他ともに許す。夏は立夏(五月五日頃)に始まり約百日間あるが、師の誕生日は七月二十四日で、「夏を四季の中で最も愛した」と愛弟子の宮脇白夜氏は述懐してる。松籟の中に佇み夏を迎えてる、颯爽とした不惑の師の姿を想定した。
幻魚師の句は山里を訪れた際の一句。そこに湧きいでる清水の音に、夏の近づく確かな足音を聞いたのである。信州に湧清水の名水は所々にあるが、北信濃木島平村・龍興寺の「平成の名水百選」の湧水は印象に残る。その一井に幻魚師の句を重ねてみた。
紫晃師の夏は、「旅」への誘いの一句。国鉄マンとして人生を過された師の旅は、列車ダイヤを効率的に配慮した計画的な旅だったのだろうか。長年、「萬緑」の幹部同人としても全国を吟行されたであろう。ハッカの爽やかな香りに、この句を作った壮年時代の師の清新な気迫を感じる。
(北童記)
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たまはりし二ン月の日を膝に乗せ | 神田北童 | ||
はばからず声を放てよ「鬼は外」 | 〃 | ||
絶間なく息づく雫牡丹雪 | 〃 | ||
春禽の影よぎる空斯くも晴る | 〃 | ||
春光を総身に浴ぶ空無辺 | 〃 | ||
注ぎたるコーヒーカップ春光る | 〃 | ||
なびかずに一川(いっせん)に沿ふ春霞 | 〃 | ||
釈迦堂へまねく灯明春寒き | 〃 | ||
禅堂の額字のびやか春浅し | 〃 | ||
雉鳩も雀も睦ぶ下萌に | 〃 | ||
春光やひときは明し城櫓 | 〃 | ||
伸びるだけ伸ぶ稜線や山笑ふ | 〃 |
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三千歩課す大寒の坂の町 | 吉田長久 | ||
寒戻るとや健やかな背骨あり | 三浦真佐子 | ||
崩れたる石棺点す鼓草 | 長峯寿子 | ||
教へたり教へられたり水温む | 森泉 透 | ||
雛の宴柾目の香る檜箸 | 稲沢礼子 | ||
豁然と霞打ち敷く八ヶ岳 | 長瀬吉毅 | ||
空つぽの墓の花立て春を待つ | 脇田 警 | ||
思ひきり髪を短く春立つ日 | 宝田静子 | ||
紙雛の瞳少女に戻りゐる | 堀田芙美子 | ||
頭上より励ますごとく寒鴉 | 田中君枝 | ||
大寒や輝きの増す一つ星 | 塚本瑛子 | ||
戦せぬ国なればこそ梅真白 | 本多紀男 | ||
小走りの息白々と始発駅 | 今井絹江 | ||
縁小春安曇訛りの長話 | 吉田裕子 | ||
青き踏む孫先になり後になり | 塩野入靖夫 | ||
卒業式「信濃の国」に気持込め | 邑上春代 | ||
捨て畑に瑠璃一面のいぬふぐり | 徳原キヨ子 | ||
野仏の際に流るる芹の水 | 島田賢一郎 |
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三千歩課す大寒の坂の町 | 吉田長久 | ||
寒戻るとや健やかな背骨あり | 三浦真佐子 | ||
崩れたる石棺点す鼓草 | 長峯寿子 | ||
教へたり教へられたり水温む | 森泉 透 | ||
雛の宴柾目の香る檜箸 | 稲沢礼子 |
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豁然と霞打ち敷く八ヶ岳 | 長瀬吉毅 | ||
空つぽの墓の花立て春を待つ | 脇田 警 | ||
思ひきり髪を短く春立つ日 | 宝田静子 | ||
紙雛の瞳少女に戻りゐる | 堀田芙美子 | ||
頭上より励ますごとく寒鴉 | 田中君枝 | ||
大寒や輝きの増す一つ星 | 塚本瑛子 | ||
戦せぬ国なればこそ梅真白 | 本多紀男 | ||
小走りの息白々と始発駅 | 今井絹江 | ||
縁小春安曇訛りの長話 | 吉田裕子 | ||
青き踏む孫先になり後になり | 塩野入靖夫 | ||
卒業式「信濃の国」に気持込め | 邑上春代 | ||
捨て畑に瑠璃一面のいぬふぐり | 徳原キヨ子 | ||
野仏の際に流るる芹の水 | 島田賢一郎 |