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一跳にいとどは闇に帰りけり | |||
草田男(句集「長子」) | |||
こほろぎの耳につく夜の星あまた | |||
幻 魚(黒姫百八十四号・昭和五十二年作) | |||
昼ちちろ一山の碑は向きむきに | |||
紫 晃(黒姫二百二十六号・昭和五十九年作) |
草田男句のいとど(竈馬)は翅が無く鳴かない。体長は23o位、三対の脚の後脚が特に発達し、体長より長く特別な跳躍力を持つ。長い触覚を持ち、蟋蟀よりやや小さいが正面から見るとエンマコオロギより迫力がある。ただ眼差しは穏やか。師はこの特徴を把握しこの句が生まれた。特別な跳躍力の一跳で漆黒の闇の世界へいとどは帰ったのである。
幻魚句は百八十四号巻頭「こほろぎ」連作の中の一つ。次に「鳴けこほろぎ夜つぴて鳴けや淋しいぞ」と続く。急逝された奥様の一周忌寸前の作品。師は妻への心情を次の一文としている。「私は今妻の急逝にぶつかって、芭蕉が寿貞尼を失った時の諦観悟達した胸懐に思いを馳せ、それを非とすべくもない、是とすべくもない、偉なりと思うべくもない、酷なりと難ずべくもない。妻の遺影と骨とに疑然黙々と坐しているのみである。」師の痛恨の心情がこの一句に潜み、こほろぎの声も隠々と憂う。憂いを振り払うように数多の星を仰ぐ師の姿が浮ぶ。
紫晃句からは「昼ちちろ」の鳴声が明るく響いてくる。「夜のちちろ」と「昼のちちろ」の違いである。二百二十六号巻頭「群碑秋冷」七句中の一つ。御嶽山霊神の群碑は有名であるが、この群碑の地名は解らない。連作の作品から山中・走り根・山麓とかなりの広範囲に碑が散在する地と想定。一山の碑は向きむきになっているが、群碑の上空に明るい秋空が広がる。そして、一斉に昼ちちろの鳴く声が合唱のごとく響いてくるのである。
(北童記)
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馬鈴薯の花の歓声畑おおふ | 神田北童 | ||
麦秋の跡餌を拾ふ野鳩どち | 〃 | ||
葉桜の蔭で手を振る乙女像 | 〃 | ||
いつのまに荒畑占むる姫女苑 | 〃 | ||
黒蟻の庚申塔を逡巡す | 〃 | ||
対岸の遠郭公に耳預く | 〃 | ||
雉鳩の声に目覚めて芒種来る | 〃 | ||
しだれきて鬱々香る栗の花 | 〃 | ||
梢まで睫毛動かす合歓の花 | 〃 | ||
合歓の花香り優しきマドレーヌ | 〃 | ||
風動き微睡覚むる合歓の花 | 〃 | ||
梅雨明や鉱毒川の鎮もりぬ | 〃 | ||
涼風に向く痩身のやすらけし | 〃 |
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明日いよよワクチン接種髪洗ふ | 三浦真佐子 | ||
風薫る摂社末社の隔てなく | 長田五月 | ||
嶽見つつ風に憩ひし草刈夫 | 脇田 警 | ||
雲の峯かつて決意の若き日を | 徳久芳拙 | ||
海風に汽笛の遠し夏薊 | 新島俊哉 | ||
老鶯の今朝の命を惜しみ鳴く | 宮下陽子 | ||
石段の幅を狭める濃紫陽花 | 田中 和 | ||
木曽谷やどの代田にも山の影 | 堀川悦子 | ||
懐かしきブリキバケツで水を打つ | 吉村郁子 | ||
金色の夕日に染まる蛇に遭ふ | 長崎 蕗 | ||
青鷺のふはりと浮ぶ田圃道 | 櫻井半吉 | ||
声明に併せ奏づる蝉時雨 | 梅本香折 | ||
コスモスの風に頷く草の駅 | 茅野裕彦 | ||
凌霄花の一樹揺れたる医者の窓 | 矢嶋ちか子 | ||
頑なにルート逸れざる蟻の道 | 若月すすむ | ||
夏燕仁王門より現れぬ | 佐藤澄子 | ||
糶棒(せりぼう)の先の視線に烏賊光る | 工藤チトミ | ||
川沿ひに目覚ます如く花萱草 | 西 絹代 |
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明日いよよワクチン接種髪洗ふ | 三浦真佐子 | ||
風薫る摂社末社の隔てなく | 長田五月 | ||
嶽見つつ風に憩ひし草刈夫 | 脇田 警 | ||
雲の峯かつて決意の若き日を | 徳久芳拙 | ||
海風に汽笛の遠し夏薊 | 新島俊哉 |
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老鶯の今朝の命を惜しみ鳴く | 宮下陽子 | ||
石段の幅を狭める濃紫陽花 | 田中 和 | ||
木曽谷やどの代田にも山の影 | 堀川悦子 | ||
懐かしきブリキバケツで水を打つ | 吉村郁子 | ||
金色の夕日に染まる蛇に遭ふ | 長崎 蕗 | ||
青鷺のふはりと浮ぶ田圃道 | 櫻井半吉 | ||
声明に併せ奏づる蝉時雨 | 梅本香折 | ||
コスモスの風に頷く草の駅 | 茅野裕彦 | ||
凌霄花の一樹揺れたる医者の窓 | 矢嶋ちか子 | ||
頑なにルート逸れざる蟻の道 | 若月すすむ | ||
夏燕仁王門より現れぬ | 佐藤澄子 | ||
糶棒(せりぼう)の先の視線に烏賊光る | 工藤チトミ | ||
川沿ひに目覚ます如く花萱草 | 西 絹代 |